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『ファイアーエムブレム 風花雪月』について語りたい【5】黒鷲の生徒たち

「ファイアーエムブレム」シリーズ中の名作である『ファイアーエムブレム 風花雪月』について、今回はエーデルガルト率いる黒鷲の学級の生徒たちの人となりを私個人の思い入れを込めてガッツリ語っていきたいと思います。

 

アドラステア帝国は個人主義?

エーデルガルト率いる黒鷲の学級は、アドラステア帝国出身者の学級です。「帝国」という言葉の響きからして、堅苦しい雰囲気を思い浮かべてしまいそうになります。しかも見るからにエーデルガルトは典型的な学級委員長タイプ。真面目でちょっと融通が効かなそうですし、自分にも他人にも厳しそうな雰囲気がしますよね。

でも実際にこの学級の生徒たちと過ごしてみると、金鹿ほどの奔放さは無いものの、締め付けられているような窮屈な感じは全くありません。強いて言うならエーデルガルトが彼らを自由に泳がせているという感じですね。 

黒鷲の学級を担任しエーデルガルトを守り抜く道を選ぶと、時折主人公たちの前に姿を現していた「ある人物」が仲間となってくれます。「まさか一緒に戦えるなんて!」とビックリしました。

 

黒鷲の学級の生徒はこんな子たち

エーデルガルト=フォン=フレスベルグ(声:加隈亜衣)

次期皇帝となることが確約されているアドラステア帝国の皇女。凛としていて気品があり、隙を感じさせません。美しい銀髪をなびかせ、ロードの可愛いコスチュームで斧を豪快にぶん回す姿が私的に非常にツボ。彼女の意志の強さ、そして覚悟はすごいです。

凛とした表情のエーデルガルト

エーデルガルトの覚悟

戦争編となる5年後の姿から漂う貫禄は、さすがは皇帝。誇り高きその崇高な姿には、クラッときちゃいます。

技能として「信仰」が苦手なんですよね。その他、プロフィールの嫌いなもの欄に「鎖」とありますね……明らかに不穏。過去に何があったんでしょうか。

その他「取り乱すこと」も嫌いというエーデルガルト。律し続けてるんですよね、自分を。彼女には、皇帝となって実現すべき「大きなこと」があるので。

エーデルガルトは士官学校の時から、主人公が傭兵上がりの新任教師であるにも関わらずその能力を認め、「師」と呼んでとても慕ってくれます。それがとても可愛いのですが、それでも打ち明けられない決意を胸に秘めているなということを感じさせます。先生としては、エーデルガルトにはもっともっと弱い素の部分をさらけ出してもらえたらうれしいんだけどな〜と思いますが、皇帝になってしまったらそれも難しいのでしょうね。甘え下手で損をしている感じがします。

帝位についてからの彼女は、髪飾りとして角の装飾品を付けています。彼女の威厳を増す要素でもあるんですが、この角、羊のように巻いているのかと思ったら違いましたね。これは山羊の角だったりするのかなぁなんて。

あるルートでは、エーデルガルトの幼い頃の姿が見られます。とても愛らしい少女でほっこりするんですが、ちょっと違和感が。その頃の彼女は銀髪ではないんですよね。その理由が明らかにされた時、彼女の背負ってきたものの正体を知って胸が痛くなりました。

 

ヒューベルト=フォン=ベストラ(声:小西克幸)

エーデルガルトのそばに影のようにいつも付き従っているヒューベルト。皆よりもちょっと年上の20歳ではありますが、その落ち着きっぷりは、年齢に偽りありではと思わせるほど。笑い方が怖いですが、ホントにとっても伝わりにくいんですけれど、彼なりに級友たちに気を使ってはいます。「高所が苦手」とあって、ドラゴンに乗せたら彼も怖がるのかなと想像してしまいました。

7歳でエーデルガルトの従者となってからずっと彼女を支えてきたわけですが、その様子を見ていると、親愛や敬愛などという優しくも生温い言葉では言い表せないものを2人が共有しているのを感じます。きっと本来の性格は穏やかな人なんじゃないかと。エーデルガルトを守ることに徹して、今の彼があるのかなと思っています。

士官学校の制服はあまり似合ってませんでしたが、第2部では黒づくめの服がとてもお似合い。彼は歳を取った方がカッコよくなるタイプですね。話し方がセクシーだな〜と思います。

 

フェルディナント=フォン=エーギル(声:坂泰斗)

貴族は戦国時代の武将みたいにフルネームで名乗るものなんでしょうか。全生徒たちの中で、彼のフルネームを一番最初に覚えました。

エーデルガルトをなにかとライバル視して張り合いますが、彼女の優秀さを認めることもできる、とても素直で朗らかな人。エーデルガルトを打ち負かしたいわけではなく、自分が彼女と同等かそれ以上に有能な人間であるということを認めて欲しいんですよね。皇帝となったエーデルガルト1人だけに任せるのではなく、自分だって宰相となって国のために頑張らねばならないんだ‼︎ って思っているんですよ。大貴族の家の人間として、国のために自分がなすべきことを彼は常に考えているんです。真面目だ! お父上はちょっと欲深いダメダメな人のようですが、息子のフェルディナントは非常に純粋で良い人だな〜と思います。

案外あっさりした顔立ちだなと思っていたら、第2部ではまるで補完でもするように波打つ長髪になり、かなり派手な服を着ています。私が想像するいわゆる貴族っぽい格好を彼がしてくれて、満足しました。

好きなものに「高所」ってありますねえ。良くも悪くもヒューベルトと対照的で、いい感じに対になっています。

 

ベルナデッタ=フォン=ヴァーリ(声:辻あゆみ)

引きこもりでなかなか部屋から出てきてくれない子。主人公とはしばらくドア越しでの会話が続きますが、この子はどの生徒との支援会話もかなり面白いです。愛されキャラですね。みんなからとても可愛がられています。

ちゃんと戦ってくれるのか心配になるくらいに外には出てきてくれないけれど、絵を描いたり手芸をしたりとても多趣味な子で、食虫植物について熱く語るあたり個人的にかなりシンパシー感じます。

開き直ると彼女はかなり強くなってくれます。戦闘で敵に勝った時の決め台詞は、キャラクターごとにいくつかパターンがあるのですが、ベルナデッタの台詞の中では「また生き延びられた! また殺した!」という言葉がグサッと胸に刺さり印象的です。

 

カスパル=フォン=ベルグリーズ(声:村上聡)

士官学校時はわんぱくなガキんちょといった感じのカスパル。ちびっこいし可愛いんですが、戦争編になるとかなりキリッとしたいい感じの青年になるんですよ〜。5年でよく成長してくれましたって感じです。性格はあまり変わらないですけど、それも可愛いから許します。とにかく裏表の無い真っ直ぐな人です。

個人スキルは「喧嘩好き」。私生活でもすぐに喧嘩に首を突っ込んだりしてますが、戦闘では非常に楽しそうに戦ってくれ、とても頼もしい存在です。私がプレイした時は、拳で戦う男まっしぐらでバトルモンクなどになってもらっていました。

嫌々戦ってるリンハルトとは、性格から何から真逆のタイプですがとても仲良し。話していて気が楽なのかもしれませんね。

次男であるということで家督を継承できないため、武芸で身を立てようと熱心に訓練に励む、非常に前向きな思考の持ち主。兄を羨んだり妬んだりしたって仕方ないじゃんって感じで、見ていてとても気持ちがいいです。

 

リンハルト=フォン=ヘヴリング(声:堀江瞬)

とにかくいつも眠そうでぼんやりとしているのに、かなりの強心臓。色白で長い髪を後ろで束ねた中性的な顔立ちからは想像もつかないほど、しれっとすごいことを口にするので、支援会話を見ているこちらが焦ってしまうほど。リンハルト自身はただ本音を言っているだけで自覚も無いようですが、相当な「たらし」です。

エーデルガルトも認めるほどの優秀な頭脳の持ち主なのですが、独自の価値基準の物差しに従って行動していて、他人からの評価は全く興味無し。実家なんて潰れてもいいなどと平然と言い出すなど、家督や地位を受け継ぐことにも関心がありません。その鋼のメンタル見習いたいくらい。彼の嫌いなものの中に「政治」とありますが、もしも彼がその方面で本気を出したら、エーデルガルトも凌ぐ剛腕っぷりを発揮しそうだなと思います。

なんと、本編の生徒で唯一リンハルトだけが、男主人公と同性婚だとはっきり明示されるペアエンドを迎えられます。リンハルトに陥落しちゃうんですよ、ベレト先生が。すごい……。

主人公の性別によって支援会話の内容が変わるわけでもないですし、リンハルトにとって性別なんてものは生物学的な体の構造の差ぐらいでしかないようです。彼はその人そのものに興味を持って丸ごと好きになっていく人なのかも。それって素敵だなと思います。

 

ペトラ=マクネアリー(声:石上静香)

ペトラは、帝国に従属するフォドラの西にある島々からなる国ブリギットの王女。長い髪を編み込んだ凝った髪型をしています。語学は苦手そうですが、かなりの頑張り屋さん。

言葉も文化も違うフォドラに異国の王女である彼女がたった1人で来ている実際の理由は、「留学」と表現されるほどお気楽なものでも、前向きなものでもなかったりします。帝国とブリギットとの力関係をひしひし感じさせます。

思うところはいろいろあると思いますが、それを胸に秘め、この士官学校での時間を無駄にしまいと過ごす姿勢は、彼女の王女としての自覚なのだなと感じます。

 

ドロテア=アールノルト(声:長妻樹里)

この学級の唯一の平民出身者。帝国の歌劇団の元歌姫。エーデルガルトを「エーデルちゃん」、ヒューベルトを「ヒューくん」と呼ぶ強者。

男漁りをしているし、玉の輿を狙ってるんだな〜と思いきや、意外とものの見方が冷めていたりして彼女は奥が深いです。嫌いなもの欄に「自分自身」とあります。貧しい孤児だったドロテア。美貌も歌の才能もあったのでしょうが、歌姫になるまで相当苦労をしたはず。若くてきれいな歌姫としての華やかな見てくれなどではなく、自分の内面・本質を見て愛してくれる人間を探し求めているのです。それは、彼女が女主人公との同性でのペアエンドがあることでも感じられます。

 

生徒たちの関係性

黒鷲の学級は、平民出身者であるドロテア以外の全ての生徒が、皇帝とその重臣の子息息女たち。本編の9年前に起こった「七貴族の変」によって現皇帝の権限の多くが剥奪されてしまいました。この「七貴族」とはこの黒鷲の生徒たちの親。つまり、エーデルガルトは自分の父の権限を奪った者の子供たちと同じ学級にいるのです。青獅子のディミトリはみんなから「殿下」と敬称で呼ばれていますが、彼女は名前で呼ばれていますよね。級友たちの親が彼女に敬称を付けていないからかも? と思ったりして、帝国の危うい権力バランスを想像してしまいます。

そんな事情があるからこそ、次の皇帝となるエーデルガルトは幼い頃から彼女を支え続ける侍従ヒューベレトを伴い、士官学校の在学期間にも関わらず自分が継ぐ帝位を盤石なものにすべく準備を着々と進めています。

しかし級友たちの親との関係のこともあって、エーデルガルトは黒鷲の学級の生徒たちには何も告げずに動いているのです。級友たちが学生生活をのんびりと楽しんでいる様子でいるのとかなり対照的です。

代々宰相を務める家のフェルディナントは、父親に代わって自分が宰相になった後のことを考えているようですが、嫡子であるにもかかわらずリンハルトは家を継ぐことに全く興味が無いですし、ベルナデッタは言わずもがな。カスパルは次男で家督を継げないですし、ペトラやドロテアはそもそも帝国の貴族ですらありません。

それぞれの立場の違いがあるので仕方ないとはいえ、エーデルガルトと他の生徒たちとの間には、士官学校で共に過ごす時間に対する考え方にとても大きな落差があるのを感じます。そのため後々エーデルガルトが帝位についた時に、彼らは良くも悪くも彼らは大きな衝撃を受けることになります。エーデルガルトが選び突き進む道を、黒鷲の級友たちがそれぞれに受けとめ戦うという構図となるのです

まだ学生だからということで帝国の未来を担うという自覚に少し欠けていた彼らを、否応なく現実に目を向けさせ突き動かすことになるのは、やはりエーデルガルトの燃えるような意志の強さとカリスマ性なんですよね。覚悟がなければ、皇帝なんて務まらないですから。

 

印象深い支援会話

私が級友同士の会話で特に印象に感じた組み合わせは、エーデルガルトとカスパル、そしてフェルディナントとヒューベルトの2組です。

 

エーデルガルトとカスパル

エーデルガルトはある事情から、紋章も貴族制度も古い価値観に囚われた排除すべきものという考えを持つようになりました。そのため、自分が皇帝となったら紋章の有無に囚われず、真に優秀な人を重用しようと考えています。確かに、その家に生まれたというだけで、ずっと一握りの人間が国の中枢に居座り続けるというのは健全な状況とは言えません。

なのでカスパルについて、エーデルガルトはあまり出来の良いとも思えない兄がいるというだけで家督を継ぐことが出来ず、必要以上の努力をしなければならない気の毒な存在だと見ています。

しかしカスパル本人は、家の事情や兄について理解を示していますし、自分が理不尽な扱いを受けているとは強く思ってはいません。彼は自分の意思で目標を立てて強くなる努力を続け、そのことを楽しんでもいるのです。

貴族制度そのものを打ち壊そうとするエーデルガルトと、制度があっても自由に生きる道を選んでいくカスパル。その対比が強烈だなと感じます。

 

ヒューベルトとフェルディナント

代々宮内卿を務めるベストラ家の嫡子であるヒューベルトと、同じく代々宰相を務めるエーギル家の嫡子であるフェルディナント。

ヒューベルトは、一方的にエーデルガルトをライバル視して何かと突っかかっていくフェルディナントのことをさぞかし嫌いなんだろうな〜と思ってましたが、案外そうではないんです。冷徹などと言われるヒューベルトですが、級友たちの能力を肯定的に評価しているんですよね。

ヒューベルトは感情を表に出さないタイプで、フェルディナントはいつも明るく表情も豊か。内面も外見も正反対のように見える2人ですが、方法は違っていても臣下としてエーデルガルトを支えようという気持ちは同じだということに、言葉を交わすうちにお互い気づいていき、それぞれ相手の長所を口にして言い合うほどに仲良くなるんです。2人のほのぼのした会話見ていて、妙にこちらが照れてしまいました。陰と陽で補完し合い、両輪となるということなのでしょう。

 

次回はディミトリ率いる青獅子の学級の生徒たちについて 、思い入れたっぷりに語りたいと思います。

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