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『ファイアーエムブレム 風花雪月』について語りたい【9】風花雪月の意味するもの

皆さんは「ファイアーエムブレム」シリーズ中の名作『ファイアーエムブレム 風花雪月』をプレイしたことがありますか? 

今回は、「風花雪月」というタイトルにこめられた意味とテーマソングについて語りたいと思います。かなりのネタバレが含まれるので、未プレイの方やネタバレダメという方はご注意ください。

 

風花雪月という言葉

『ファイアーエムブレム 風花雪月』のタイトルの「風花雪月」ってちょっと耳慣れない言葉ではなかったですか? 私は初めて目にしたとき「花鳥風月」かとベタに勘違いをしていました。

ファイアーエムブレム風花雪月オープニング画面

オープニング画面

この「風花雪月」という言葉、私はこのゲームで初めて知ったので、家にある辞書で調べてみましたが掲載無し。あんまり馴染みの無かった言葉のようですね。「雪月風花」ならあるのではと思って見たところ、辞書に載っていたのは「雪月花」でした。あと1文字です。惜しい。

ということで、ならばウィキペディアさんだということで見てみると、こんな感じでした。

 

風花雪月

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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風花雪月(ふうかせつげつ)とは、自然の美しい風景や、そこから生じる情緒情趣を意味する中国語。日本語の花鳥風月に相当する。また、これから派生して以下のような意味でも使われる。中国語では、日本の花鳥風月とは違い「美辞麗句にすぎない、内容に乏しいものごと」といった負のニュアンスを帯びる場合がある[1][2]

脚注

  1. ^ 「fēng huā xuě yuè【风花雪月】〈成〉1 美辞麗句を並べただけで中身がない(こと).2 男女の色恋」(『小学館 中日辞典 第2版』439頁)。
  2. ^ 风花雪月(風花雪月)- 汉典”. 2019年7月25日閲覧。

 

ウィキペディアさんでもこのくらいしか説明の文章量がないということで、これ以上はちょっとイジりようがない感じですね。元は中国語のようですが、このファイアーエムブレムの世界観はガッツリ西洋風。3人の級長さんたちをイメージさせるような言葉を探して辿り着いた言葉なのではないかと思います。

この『風花雪月』というゲームタイトルそのものも美しいですが、エーデルガルト、ディミトリ、クロードの級長さんたち3人それぞれが辿るルートにも、とても美しい名称が付けられているんです。

エーデルガルト率いる黒鷲の学級が辿るルートは「紅花の章」
エーデルガルトの凛とした美しさや、燃えるような意志の強さを感じられる章タイトルです。

ディミトリ率いる青獅子の学級が辿るルートは「蒼月の章」
とても繊細な優しさの裏に荒々しい一面を持ち合わせているディミトリをよく表現していると感じます。

クロード率いる金鹿の学級が辿るルートは「翠風の章」
クロードの持つ自由気ままで飄々とした雰囲気は、まさしく「風」のイメージにぴったりです。

「花」「月」「風」ときて、残るは「雪」のみ。しかし第4の学級である灰狼の学級の章タイトルは「煤闇の章」で、「雪」ではありません。もうこの他に学級は無いぞ? となりますよね。そこがこのゲームの重要なポイントとなります。

実は黒鷲の学級のみ、ある時点でエーデルガルトたちの辿るルートに絶対に引き返すことのできない分岐点が存在しています。「紅花の章」と分岐して発生する章のタイトルは「銀雪の章」。このルートをもって『風花雪月』というゲームタイトルとそれぞれのルートの名称が完全に呼応するのです。

 

2つの未来

『ファイアーエムブレム 風花雪月』のテーマソングのタイトルは「フレスベルグの少女〜風花雪月〜」。ゲームのオープニングで流れている曲です。

 

フレスベルグの少女~風花雪月~

フレスベルグの少女~風花雪月~

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  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

この少女とは、エーデルガルト=フォン=フレスベルグ、つまりエーデルガルトのことを指しています。彼女の目線で描かれる歌詞の世界も、それを彩るメロディーも、実に切ないんですよ。ホントいい曲です。

このゲームのテーマソングがエーデルガルト目線の歌詞であることからも分かるように、彼女の思いや信念がこの物語に大きく関わっています。『ファイアーエムブレム 風花雪月』の物語は、エーデルガルトを軸に展開していると言っていいと思います。なぜなら、フォドラの地を三つ巴の戦争に巻き込んだのは、エーデルガルトなのですから。

この『ファイアーエムブレム 風花雪月』の舞台となるフォドラの地では、紋章は女神によりネメシスと共に邪神と戦った「フォドラ十傑」と呼ばれる英雄たちに与えられたものとされ、紋章を持っていること自体が、選ばれし者である証とも言えます。

十傑の末裔である貴族は、基本的に紋章を持たなければ家を継ぐことはできません。紋章は血脈により受け継がれますが、血を継ぐ者全てが紋章を宿すわけではなく、同じ家に生まれた兄弟姉妹であっても紋章を持つ者と持たざる者とでは運命が大きく変わるほどに、この地では紋章は絶対視され尊ばれているのです。

しかし自分だけでなく兄弟姉妹の命をも紋章の力のために蹂躙されたエーデルガルトは、この紋章そのものの存在を憎むようになります。人間には紋章の力など必要ないと考えた彼女は、アドラステア皇帝として、人々を紋章に縛りつける世界を作り上げたセイロス聖教会に向けて宣戦布告をするのです。アドラステア帝国は聖者セイロスがヴィルヘルム1世に血を分け与え、建国させた国。エーデルガルトが起こした戦争は、建国の昔から今に至るまで、アドラステア帝国を支配し続けてきた聖者セイロスから人の手に国を取り戻すという戦いでもあります。

エーデルガルトはまだ17歳の少女です。ここまで強くならなければ、彼女は地獄から這い出すことができなかったのでしょう。そのことを思うと、胸が痛くなってしまいます。

兵を挙げたエーデルガルトが、主人公と共にセイロス聖教会を討ち倒すのが「紅花の章」です。目指す世界の実現のため、密かに準備を進めていたエーデルガルト。そんな彼女に常に影のように寄り添い続けてきたヒューベルト。そして黒鷲の学級の生徒たちもセイロス教の教えに異を唱えるエーデルガルトに共鳴し、彼女と共に戦うことを選びます。

時に迷いを見せながらもエーデルガルトは自らを奮い立たせ、セイロス聖教会を殱滅。フォドラの地を統一し、完全に人の手に国を取り戻すルートなのです。

一方、兵を挙げたエーデルガルトがセイロス聖教会と主人公らによって倒されることとなるのが「銀雪の章」です。教団側からの目線で見た戦いとなるため、エーデルガルトは自分の考えのみを是とし、世界の秩序を武力によりかき乱す者として描かれます。

エーデルガルトの士官学校への入学はセイロス聖教会を倒す計画の中の一部であり、彼女にとって黒鷲の級友たちは利用できる駒でしかありませんでした。エーデルガルトは彼らの親を、逆らう者は排除し使える者は懐柔し、強かに権力を掌握していったのです。

エーデルガルトに騙され裏切られた黒鷲の生徒たちは、主人公や教団側の人間と共に戦うことを決意します。とても悲しいことに「銀雪の章」では、同じ学級の生徒同士が敵味方となって戦うルートとなるのです。そのため、このルートでは主人公の補佐としてセテスがまとめ役を務めてくれ、アドラステア帝国対セイロス聖教会という構図が明確になっています。

エーデルガルトの燃えるような強い意志と、戦いによって流される血の色を連想させる「紅花の章」。降り積もる雪が地面を覆い隠してしまうように、セイロス聖教会によってエーデルガルトがその存在を消し去られてしまう「銀雪の章」。まるでエーデルガルトの起こした戦争の是非を私たちに問うように、彼女の未来は2つに道が分かれているのです。

そのことを受け、実は「フレスベルグの少女〜風花雪月」という曲には、タイトルに副題の「風花雪月」が付かない別バージョン「フレスベルグの少女」が存在します。

 

フレスベルグの少女

フレスベルグの少女

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「フレスベルグの少女〜風花雪月」と「フレスベルグの少女」は一部ですが歌詞が違っているんです。 iTunesで曲を買おうとしたときに、タイトルが微妙に違う「フレスベルグの少女」が2つあるぞ!? と驚いて、ようやく私はこの事実に気づかされました。ややこしい……。

エーデルガルトの目線で書かれた歌詞は、ゲームの中だけでは分からなかった彼女の内面の揺れが感じられる内容となっています。「フレスベルグの少女〜風花雪月」の方は、歌詞にタイトルの「風花雪月」がきちんと盛り込まれており、「フレスベルグの少女」の方は、よりエーデルガルトの気持ちに寄り添う歌詞になっているなと感じました。歌詞のどの部分がどのように違っているか、ぜひそれぞれ聴き比べてみてください。

ちなみに「フレスベルグの少女」は黒鷲ルート以外でのエンディングに流れます。そのこと自体、スタッフの方のエーデルガルトへの思い入れの深さを感じますし、とても意味深だよなぁと思います。

 

戦乱に巻き込まれて

アドラステア帝国の皇帝となったエーデルガルトと同じように、ディミトリはファーガス神聖王国の国王として、クロードはレスター諸侯同盟の盟主として、いずれ国を背負うとことなる身。もちろん彼らも、それぞれ理想と野望をその胸に抱いていたはず。しかしまだ士官学校の生徒にすぎなかった彼らには、自らが戦争を起こしてフォドラを混乱に陥れる理由はありません。

一方、エーデルガルトは、セイロス聖教会を討ち滅ぼすという自らの苛烈な信念を実現しようと、兵を挙げ武力で実現させようとします。セイロス聖教会に敵対することは、この世界を敵に回すことに等しい行為、つまり敬虔なセイロス教徒の国であるファーガス神聖王国とレスター諸侯同盟とも敵対することを意味しています。それでも挙兵したエーデルガルト。青獅子のディミトリも、金鹿のクロードも、エーデルガルト率いる帝国軍の侵攻により否応なく戦乱に巻き込まれてしまったのです。

そのため、ディミトリの辿る「蒼月の章」もクロードの辿る「翠風の章」も、同じく敵として立ちはだかるのはエーデルガルトであり、アドラステア帝国を討つことが彼らの戦う目的となります。しかし彼らはそれぞれが国を背負っている立場。当然、ディミトリもクロードも自国を第一に考えて戦いを進めていきます。同じくエーデルガルトを敵としてはいますが、彼らが辿る道が描く物語はまるで異なるものとなっていき、それぞれに相応しい結末を迎えることになります。

 

ということで、これでもまだ全然語り尽くせていないので、さらに『ファイアーエムブレム 風花雪月』を語りたいと思います。次回はうっかり取り上げずにいた主人公(ベレト・べレス)の出生について語っていきます。

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