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『SK∞ エスケーエイト』ジョーチェリについて語りたい

7月4日に行われたイベントにて、舞台化とアニメ新作プロジェクトが発表された『SK∞ エスケーエイト』。今回はこの作品の大人組である「JOE」こと南城虎次郎(なんじょう こじろう 以下ジョー)と「Cherry blossom」こと桜屋敷薫(さくらやし きかおる 以下チェリー)の2人について語っていきたいと思います。

#01 PART 熱い夜に雪が降る

#01 PART 熱い夜に雪が降る

  • メディア: Prime Video

 

幼馴染みの2人

『SK∞ エスケーエイト』の大人組であるジョーとチェリーの2人。彼らは幼馴染みで、大人となってからもそれぞれ職業をもちながらスケートを続けており、まだ高校生である暦やランガの未来の姿を思わせるような存在です。

 

南城虎次郎

昼はイタリアンのオーナーシェフとして自分の店を経営。夜は鍛えられた筋肉を見せつけるかのような露出の高いコスチュームで「JOE」として「S」に参加しています。「最速のシックスパック」と呼ばれる、パワーを活かした滑りを見せてくれる肉体派スケーター。非常に女性にモテており、何人もの女性たちを連れていることも。

 

桜屋敷薫

昼は著名な書道家として活動しており、普段は眼鏡をかけ和服姿。夜は鼻まで顔を隠した袴姿の和風なコスチュームで「Cherry blossom」として「S」に参加。長い髪に美しい顔立ちで、女性のファンも多い様子。デッキに搭載したAI「カーラ」の機能を駆使し、計算された理論的で的確な滑りをする頭脳派のスケーターです。

 

他人との距離

ジョーとチェリーの2人は幼馴染みだということもあって、お互いに対して遠慮がありません。そのためか、彼らは顔を合わせればすぐにケンカが始まってしまいます。「犬猿の仲」と周りからは言われていますが、「脳筋ゴリラ」「ヒョロメガネ」などと小学生のような可愛い悪口をお互いに言い合う2人のケンカはなんだか微笑ましいもので、本人たちにとってはそれが通常モード。ケンカは2人にとってお約束であり、むしろコミュニケーション手段の1つとなっている様子。もしもケンカができないとなると互いに困ってしまうのではないかなとさえ思います。

そんなジョーとチェリーの描写で面白いなと感じるのが、それぞれの他人との距離の置き方の差なんです。

 

暦とランガに対して

ジョーはよく周囲の人を見ていて、でしゃばることなく程よい距離を保ちながらも、ちゃんと見守ってあげている度量が広いタイプ。暦やランガに対して、ジョーは自分が高校生だった頃の姿を重ねて見ているようなところがあり、彼らの良き兄貴分として接している感じがします。

暦とランガの間がギクシャクとしてしまい疎遠になりそうになった時、ジョーが彼らにそれぞれ背中を押してあげるような優しい言葉をかけてあげたことによって、暦もランガもかなり救われていたよな〜って思います。

誰とでもフレンドリーで気さくなジョーと比べて、一見ちょっと近づき難くてガードの固い印象のチェリー。普段着が和服姿ですし、美人ですしね。とはいえ決してチェリーは冷たい人ではなく、暦の頼みを聞いてランガにラブハッグの仕組みを説明してあげたり、仕事で宮古島に向かっていた船にたまたま乗り合わせた暦たちと結局一緒に過ごしていたりもしています。

大人として暦とランガに接しつつも、同じ「S」を滑るスケーターとして彼らを対等に見ている感じがチェリーにはあります。馴れ合うのを良しとはせず、1つのことに集中して極めていくストイックな人なのだなと感じます。

しかしこれが愛抱夢に対してとなると、ジョーとチェリーの印象がまるで逆転してしまいます。

愛抱夢は「S」の創始者であり伝説的なスケーター。ジョーとチェリーは「S」の初期からのメンバーであり、実力も折り紙付き。そして彼らは愛抱夢との間に長年の確執があり直接対決の機会を伺っていますが、愛抱夢とのビーフにかけるチェリーの熱量はジョーとは比べものにならないほどに強いものなのです。

 

チェリーの思い

ジョーとチェリーは、高校生の時に愛抱夢と出会いました。その頃のジョーは今のような筋肉量はまだ無くて身体が細く、チェリーは耳や唇にいくつものピアスを着けていてなかなかにやんちゃな印象です。幼い頃から一緒だったジョーとチェリーは、同じ高校に通って一緒にスケートを滑っていました。

そんなジョーとチェリーの前に現れた愛抱夢。彼は学校の制服としては珍しい白い服を着ていて、一目見ただけでも違う世界にいる人間なのだなと感じさせられます。

ジョー、チェリー、愛抱夢。彼ら3人の出会いについては、第9話でチェリーの語りとともに描かれていきます。この「愛抱夢と過ごした日々の回想の主体がチェリーである」ということがポイントなんですよね。

彼らの出会いの場面で、愛抱夢を疑うような目で見ていたジョーとチェリー。見るからにお坊ちゃんな愛抱夢に対して、本当にスケートを滑れるのかよとチェリーは挑発するようにジャンプをしてみせます。しかし高校生の頃からすでに高いテクニックを持っていた愛抱夢は、彼らの前でチェリーよりもはるかに高いジャンプを決めてみせたのです。

愛抱夢の決めたそのジャンプを見たチェリーの目は大きく見開かれ、一気にその表情が変わります。暦のジャンプを初めて見た時のランガや、ビーフでランガのジャンプを見た暦とまったく同じ表情になっているんですよね。アダムのトリックを見た瞬間に、チェリーの目の前に今まで見たこともない新しい世界が広がってしまったのです。

そして、このチェリーのモノローグですよ。


皆お前に惹かれて、引っ張られて、時を忘れた。


愛抱夢と過ごした高校生時代をチェリーが思い返しているこの9話での回想シーン。愛抱夢とは3人でいつもつるんでいたということでジョーの姿もそこにありますが、セリフが無いんですよね。ジョーとはDAPを交わしたり肩を組んだりしてはいるんですが、セリフがあるのはアダムとチェリーのみ。これってこの時のチェリーの関心が完全に愛抱夢にのみ向かっていたということを示していると思うんです。つまりジョーの言葉がチェリーの耳には入らなくなっているわけです。チェリーは「皆」と言ってはいますが、これは彼個人の気持ちを語っている部分なんです。

ジョーとは幼い頃からずっと仲の良い幼馴染みの関係。良くも悪くもお互いのことをよく知っているからこそ、チェリーにとって安心感はあっても新鮮味はありません。ジョーのテクニックも決して低くはなかったはずですが、見慣れてしまっているためにチェリーには当たり前のものにしか感じられなかったことでしょう。

しかし、愛抱夢はあの神道家の人間。愛抱夢は家の格に相応しい人間と交友関係を望まれていましたし、実際に彼はなかなか近づくことができない人物です。本来ならば、ジョーもチェリーも愛抱夢とは出会うことはなかったはず。そんな自分たちとは住む世界が違う家の人間である愛抱夢と、スケートによって引き寄せられ出会ったのです。

高いスケートのテクニックを持っていただけでなく、この頃からすでに人を惹きつけるカリスマ性をも備えていた愛抱夢。そんな愛抱夢はジョーとチェリーのことを「特別だ」とはっきりと口にし、彼らの前でだけ目深に被っていたフードを取って顔を晒すほど心を許してくれていたのです。

愛抱夢はチェリーに、今まで彼が感じたことのなかった驚きと衝撃を与えました。そのことはチェリーが愛抱夢に対して友情を超えた強い思いを抱く理由として、十分だったのではないでしょうか。

 

ジョーの思い

ジョーとチェリーは、愛抱夢についてたびたび語り合っています。2人とも愛抱夢が自分と対戦したスケーターを潰すことだけを目的とする危険なビーフを繰り返していることを知って、どうにかしてその目を覚まさせなければと考えています。

ジョーは愛抱夢を「独りぼっち」なのだろうと言っていますよね。それは非常に的を射ているわけですが、愛抱夢が自分だけの世界に入り込んでしまい孤独を拗らせて周りが見えていないと、わりと冷めた目で彼を見てい流ように感じます。一発殴って目を覚まさせようと、かなりサバサバとした感じ。手の掛かる昔のダチをどうにかしてやらなきゃなと思っているような印象です。

しかしチェリーは違います。愛抱夢が自分やジョーとのビーフを避け続けていることについて「自分たちに負けるのが怖いからだ」と軽く言い放つジョーに対し、チェリーは「愛抱夢の心には自分たちを特別な仲間だと大事に思う気持ちがまだあるからだ」と考えています。自分が知っているかつての愛抱夢こそが彼の本当の姿であり、今の愛抱夢は偽りなのだとチェリーは信じているんです。

チェリーが危険なビーフを繰り返す愛抱夢との直接対決を望んでいたのは、彼の本当の心を知りたいから。そして自分こそが本当の愛抱夢を取り戻さなければならないとチェリーは思い詰めているようにさえ感じます。それは彼のアダムへの思いの強さゆえ。

そんなチェリーのちょっと強すぎる愛抱夢への想いを、ジョーはどう感じていたのかなって思ってしまいますよね。ジョーはもちろんチェリーの気持ちに気づいていたはず。それでも彼はきっと何も言わずに、憧れや友情以上の想いのこもった目で愛抱夢を見るチェリーを隣でただ見守っていたのだろうと思います。

ジョーはチェリーを常に「薫」と本名の下の名前で呼んでいますね。でもチェリーはジョーのことをお前とばかり呼んでいて、ろくに名前で呼んでいません。ジョーがチェリーを甘えさせてあげているんですよね。きっと幼い頃から、気が強いチェリーが噛み付いてくるのをジョーが受けとめるというような感じだったのではないでしょうか。

愛抱夢とのビーフのスタート直前、ジョーはチェリーに駆け寄っていきました。それは自分が愛抱夢と戦いたかったからだとか、チェリーに勝てよとエールを送るつもりだったからなどではありません。自分のレースが終わった後に、スタート地点に戻ろうとジョーがキャップマンを急かしている様子が出てきます。なぜそんなに急がなければならなかったのかといえば、ジョーがチェリーを心配していたから。ジョーはチェリーが愛抱夢に対する憧れや友情を超えた気持ちを抱いていることに気付いています。愛抱夢にそんな想いを抱いたまま、傷つくことになるかもしれないビーフをチェリーが本気で戦うことができるのか、そのことをジョーは心配していたのです。

ジョーが見守る中、チェリーの中にあった愛抱夢を信じたいという気持ちを踏みにじるように、彼は容赦無くフライングキッスを喰らわせます。猛スピードで滑り降りて来た反動とデッキによる激しい打撃のため、入院を余儀なくされるほどの大けがを負わせられてしまったチェリー。かつて自分が「特別だ」と言ったチェリーを、愛抱夢は他の対戦相手と同じように潰しても構わない存在だと見なしたのです。

傷つき立ち上がることもできないチェリーのその姿に、いつもは穏やかなジョーも愛抱夢に殴りかからんばかりの怒りを見せます。「S」は勝つためであれば何をやっても構わないというルール無用の激しいレース。チェリーも愛抱夢も、それを理解しルールに則ってレースをしていました。トーナメントの参加者だとはいえ、彼らのレースではジョーは部外者。ここで怒りに任せて愛抱夢を殴りでもすれば、チェリーのレースを汚してしまうことになってしまいます。怒りは後でも晴らすことはできます。今はレースで傷ついたチェリーを助けるべきとグッと怒りを抑え込み、チェリーを病院へ運び込むことを優先させたジョー。それはチェリーに対するジョーの深い想いの現れだと思うのです。

 

2人の絆

愛抱夢とのビーフで負傷し、病院に運ばれたチェリー。しかし彼は病院を抜け出して、ジョーの店を1人で訪れます。体中に包帯を巻かれ、車椅子に乗っているなど満身創痍の状態のチェリー。ジョーもそんな彼の姿に、ミイラみたいだと冗談を言います。満足に動けず痛みも酷いと思われる状態だというのに、チェリーはそれでもジョーの店に来たんですよね。

愛抱夢につまらないと吐き捨てられてしまったチェリー。ちょっと上手いだけのスケーターたちと同じように、愛抱夢はチェリーを潰しにかかってきました。もう以前の愛抱夢はそこにはいなかったのです。愛抱夢を心の底で信じていたチェリーにとって、これ以上なく辛いことだったのではないかと思います。だからこそ、チェリー本人は決して認めないだろうと思いますが、どんな時でもいつも変わらずに接してくれるジョーの顔を見て話をし、安心したかったのではないかなと思うんです。

ホッとして気が抜けてしまったように、ジョーの店のカウンター席で眠ってしまったチェリー。そんなチェリーを起こすことなく、ジョーは本当に優しい表情で彼の寝顔に語りかけます。

 

俺たちは独りぼっちじゃない。そうだろ、薫。

 

その彼の言葉は、自分は絶対に愛抱夢のようにチェリーを傷つけたりはしないという誓いのように聞こえます。

あまりにも距離が近すぎて、今さら互いに素直な言葉は口に出すことができないといった様子のジョーとチェリー。しかし彼らの間には、誰にも切ることなどできない変わらぬ確かな強い絆があるのです。

 

前回は、ラン暦について語っています。興味を持っていただいた方はこちらからどうぞ。isanamaru.hatenablog.com