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『閃光のハサウェイ』についてふんわり語りたい

皆さんは映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(以下『閃光のハサウェイ』)は観に行かれましたか?私は7月の半ばに、相方に誘われて観に行ってきました。『機動戦士ガンダム』をなんとなく知ってるよ程度の自分が観に行って、大感激して帰ってきました。今回はこの『閃光のハサウェイ』についてふんわり語っていきたいと思います。

映画鑑賞記念

やっぱり印象に残ってしまった偽マフティー

 

 

私自身は『機動戦士ガンダム』(以下ファーストガンダム)は見ていなくはないのですが、作品の上澄みを飲んだかなーくらいの浅い知識を持っている程度。どんな感じかというと、ランバ・ラルというカッコいいおじさまが敵にいた、ガンタンクがけっこう好きだった、「ジーク・ジオン」、フェンシングの試合を見ていて「これが肩に刺さったりしたら痛いよなー」と思った、という感じ。

ファーストガンダムの物語はシリアスであまり明るくはないですし、勧善懲悪のような単純明快さもなくてちょっと難しいし、というイメージで見ていました。ちゃんと物語を理解できているかと聞かれると全然自信はないです。

それでも「ガンダム」のインパクトは私の心に強く残り、その後懐かしさとキャラクターの可愛らしさから『ガンダムSEED』にハマって全話見まして…。『Ζガンダム』とか『ΖΖガンダム』とかあるのは知ってますが、未視聴。劇場版があるのも知ってますが、連れて行ってくれる人もいなかったので結局未視聴のままきてしまってます。もちろん『逆襲のシャア』は観ていません……。

相方は私よりは詳しそうだけれどちゃんと話を聞いたことはなく、私が知る限りガンダムを感じさせたのは『SDガンダム』を観ていたらしいのと『機動戦士ガンダム エコール・デュ・シエル 天空の学校』の単行本を買ってたなーというくらい。それでも『閃光のハサウェイ』は気になって仕方ない様子で、ずーっとソワソワしっぱなしでした。

こんな2人で映画『閃光のハサウェイ』を観に行ったわけなんですが、見事2人ともハマって帰ってきました。

gundam-hathaway.net

 

『閃光のハサウェイ』とは

映画『閃光のハサウェイ』は、富野由悠季による小説がを原作としています。小説が上梓されたのが1989〜1990年にかけてということで、30年もの年月を超えて映像化された作品です。ファンの方はずっと待ち望んでいらしたんでしょうね。満を持しての映像化ということなのだろうと思います。

この作品の主人公ハサウェイ・ノアは、ブライト・ノアの息子。ガンダムをほとんど知らない方でも、アムロ・レイシャア・アズナブルの名前くらいは知っているのではないでしょうか。ハサウェイの父はファーストガンダムの主人公であるアムロが搭乗していたホワイトベースの艦長であり地球連邦軍の英雄です。

ブライトさんって、初代艦長の負傷によりまだ20歳そこそこでいきなり艦長に抜擢されていたんですね。アムロやフラウ・ボウなど他のキャラクターたちとそこまで歳が変わらないというのに、目が小さくとても大人な感じで容姿がデザインされていたので、ファーストガンダムを見ていた時はもっとずっと年上の人だと思っていました。

ファーストガンダムではアムロとシャアに焦点が当てられるため彼らの印象は強いのですが、ブライトさんに関しては漠然と司令官として頑張ってたなーというイメージがあるくらい。でもそんな有能な地球連邦軍の軍人(しかもまだ現役)の父を持つハサウェイは、なんと反連邦組織のリーダーとして暗躍しているんですよ。その設定だけでもめちゃくちゃ興味そそられますよね。

 


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しかし、そこで立ちはだかるのが『機動戦士ガンダム』という作品の大きさです。熱烈なファンの方たちのいらっしゃる「ガンダム」は、長い歴史を持ち、シリーズとして多くの作品があります。そんな偉大な作品だというのに、ちょっと興味を持っただけの人間がいきなり観に行って理解ができるのか? という不安で、どうしても二の足を踏んでしまい、なかなか劇場に行けず。どうやら相方も同じ思いだったようなんですよね。

そこでTwitterなどをいろいろあさってみたところ「ガンダムを知らなくても面白かった」というポジティブな感想が多く、それらの声に背中を押されて劇場に向かいました。

アニメカルチャーメディア Febri(https://febri.jp/)での村瀬修功監督のインタビュー記事によれば、もともと「ガンダムに触れてこなかった人にも伝わる内容で」というオーダーがあったとのこと。ガンダムの小説の映像化でしかも3部作ということで、相当要求レベルは高かったんじゃないかと思います。しかし、ガンダムについて何も知らずに見たとしても、このナイーブさと危うさを持ち合わせるハサウェイという青年から誰もが目が離せなくなってしまうはず。それだけ脚本も映像も演技も素晴らしいものでした。

febri.jp

 

純粋さと無謀さと危うさと

宇宙から地球へと向かうシャトルの乗客としてハサウェイは登場します。政府高官とその家族が多数搭乗していたそのシャトルを「マフティー」を騙る集団が襲撃、ハイジャックされてしまいます。ハロウィンの仮面で顔を隠したそのハイジャック犯たちの隙をついてハサウェイは反撃に出ますが危うく犯人の1人に撃たれそうになり、同じシャトルに偶然乗り合わせていた地球連邦軍大佐のケネスに間一髪助けられます。失敗したらどうするんだとケネスに問われるのですが、その時のハサウェイの返した言葉は「分からない」なんですよね。ハサウェイには後先考えない危うさがあるなと印象付けられる場面です。

彼のこの危うさに大きな影響を与えている人物が、クェス・パラヤという少女です。ハイジャック犯に反撃する直前、ハサウェイの頭の中に少女の声が語りかけていました。

 

やっちゃいなよ、
そんな偽物なんか

 

この声の主こそがクェスなんです。彼女はハサウェイの初恋の相手。地球連邦軍の高官の娘でありながらシャア率いるネオ・ジオン側に付き、ハサウェイは彼女の死を目の当たりにすることとなりました。つまりハサウェイは初恋の相手を地球連邦軍に殺されてしまったわけですね。そりゃ、何年経っても引きずりますし、地球連邦軍の事を信じられなくもなりますよ。

そしてこのクェスの声をハサウェイが聞いた直後にギギが立ち上がり、同じ言葉を叫ぶんです。まるでハサウェイの頭の中で響いた声を彼女も聞いていたかのように。

ハサウェイの中で癒すことのできないトラウマとして残り続ける少女クェスと同じ言葉を口にしたギギ。ハサウェイが意識しないでいられるはずもないですよね。

 

「運命の女」ギギ

ハサウェイが心惹かれてしまう少女、ギギ。彼女は容姿が美しいだけでなく、非常に鋭い感性の持ち主。自分ですら理由も理屈も分からない「真実を見抜く力」を持っています。ガンダムで言う「ニュータイプ」の素質があるのでしょう。彼女には「巫女」的な神秘性を感じます。

そんなギギに、自身こそが「マフティー」のリーダーであるマフティー・ナビーユ・エリンであることを見抜かれてしまったハサウェイ。彼女の口から正体が明らかにされてしまう危険もあるため、彼女に誘われるまま同じホテルの部屋に宿泊することにしますが、いつしか良くないことだと理解しながらもギギに心惹かれていってしまうのです。

ハサウェイはギギの中にクェスを想起させるものを感じていますが、彼女に惹かれる理由はそれだけではありません。「伯爵」と呼ばれる男の愛人であるギギ。彼女は自分の美しさを自覚していて、蠱惑的に振る舞い男性を翻弄することを楽しんでいる強かさもありながら、素直な少女らしい脆さをも覗かせます。ズルいのが、この脆さがギギの演技ではないということなんですよ。そして彼女の予知とも言えるような「真実を見抜く力」。これらを併せ持っているという多面性こそが、彼女の纏う抗うことができないほどの強烈な魅力なのです。「運命の女」と言いたくなりますね。まさしくハサウェイはギギと出会うべくして出会ってしまったわけなのです。

 

暗闇の市街戦

図らずもハイジャックに巻き込まれたことで足止めを喰らうこととなったハサウェイは、自身が指示した夜襲の混乱に乗じて仲間の元へ戻る計画を立てます。しかし彼は激しい戦闘の中でギギを置き去りにすることができず、彼女の手を引いて夜の街を攻撃から逃れるため駆けずり回ります。仲間が近くにいることを知りながら、怖がりしがみついてくるギギを思わず抱きしめてしまうハサウェイ。当然仲間との合流は出来ず、しかもこの戦闘で仲間内の1人が捕虜にされるという結果になります。

 


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この夜襲のシーン、光の描写が素晴らしいんですよね。夜の市街戦であることから、戦闘に巻き込まれた人間から見るモビルスーツがまるで人を襲う怪物のような不気味なものに見えるんです。

闇に溶け込んだ巨大な機体が放つビームや戦闘による火花が飛び散り、機体同士だけでなく周囲の建物も崩壊してしまうなどの大きな被害が及んでいく様子が克明に描かれていきます。この戦闘シーンに迫力がなければ、ギギを置いて仲間のもとに行けなかったハサウェイにイライラしたと思いますし、「ひどいよ、こんなの怖い」と怯えているギギに、自分で攻撃させておきながら「ああ、そうだ。本当にひどい」などと答えてしまうハサウェイの言葉にまったく理解ができなかっただろうと思います。しかし、映画館の暗い部屋で座って見ているこちらまでもが、夜の街の戦闘に巻き込まれたかのような感覚に陥るほどの破壊力が映像にあるため、ハサウェイの冷酷になりきれない言動を受け入れるしかなくなってしまうのです。

 

「立ちはだかる男」ケネス

ハサウェイはシャトルの中でギギの他にも、彼の運命に大きく関わることになる人物と出会っていました。地球連邦軍のケネス・スレッグ大佐です。ハサウェイとケネスが互いの素性を知らないままに協力しハイジャック犯を捕らえるところから、この物語は始まります。しかしケネスがシャトルに搭乗していたのは「マフティー」掃討部隊の司令官としての命を受けたため。つまりハサウェイとケネスは、互いに自身の敵となる男と共闘しハイジャック犯を制圧していたのです。

このケネスというのは、なかなかに一筋縄ではいかない人物。シャアの反乱の時にはシャトルの女性乗務員を口説いたりギギに声を掛けてバツイチなのを見抜かれたりと女性にだらしない所もありつつも、新型モビルスーツの開発を地道に続けているような周到さも持ち、尋問の時には暴力も辞さず、戦闘時の切り札として捕虜を人質とすることにも躊躇を見せない冷徹さもあります。そしてギギとの会話からハサウェイこそが自分のターゲットであることを見抜く鋭い洞察力も持っています。

ケネスは軍人として司令官として非常に有能な人物であり、優しさゆえの甘さが消えないハサウェイとは対照的な、まさしく敵として対峙する存在として相応しい人物だと言えます。

 

カボチャ頭の意味

私は『閃光のハサウェイ』の映画を原作小説を読まない状態で見に行っていて、当然結末がどうなるのかは知らずにいました。しかし映画鑑賞後に知ってしまったんですよね……不可抗力で……。

結末を知るまでは「続きが楽しみだなぁ〜」とのんきに思ってたんですが、今はテロ組織のリーダーであるマフティー・ナビーユ・エリンことハサウェイ・ノアの辿る道を「最後までしっかりと見届けなくては!」という決意に変わっています。

中盤で、ダバオの街に出たハサウェイがタクシーで移動中に運転手と会話をする場面がありますが、未来の世界の理想を掲げて戦うハサウェイと今の生活でいっぱいいっぱいな運転手とではまるで価値観が合わず、会話が噛み合っていませんでした。

連邦政府の要職を世襲と血縁で固め、地球環境保全のため全人類がスペースコロニーに移住するとしながらも、例外として政府高官や富裕層と彼らの生活を支える労働者のみが地球に残り、それ以外の人間を不法滞在者とみなして強制的に宇宙へ送還する「人狩り」が行われている状況。このような一部の人間が地球を我が物顔で牛耳る現状を変えるため、マフティーは連邦政府の要職にある人物に狙いを絞った暗殺というテロ行為を行っているわけです。

無差別ではないにしろ卑劣なテロ行為には違いなく、一般人も被害を被ることはあり、行動として手段としてこれが正しいのか甚だ疑問です。マフティーの掲げる理念は正しくても、人々からは絵空事のように思われ、支持されてはいません。

で、そこで思ったのが、作品冒頭のハイジャック犯のリーダーがカボチャのマスクを被っていたことにすごく意味があるのではということ。ハロウィンの仮装のマスクですし、他のメンバーは骸骨とかのマスクを被っているのに、なぜわざわざカボチャだったのか。

カボチャって中身がスカスカなんですよね。そんな上っ面だけのカボチャのマスクを被った偽物の男がマフティと騙り政府高官を撃ち殺すということに、ハサウェイたちの理念・行為に対しての強烈な皮肉を感じます……。

 

もしもパラレルであれば

この先、どう考えても地球連邦軍に対して分が悪い戦いを挑み続けることになるハサウェイ。

 

身構えている時には、死神は来ないものだ。

 

こんなアムロの言葉がハサウェイの脳裏を過ったりして、「じゃあ、どんな時に死神が来てしまうの?」って感じで、なんだか穏やかじゃありません。

でも、ちょっとだけこの先どうなるかわからないぞと思わせる事実があります。小説『閃光のハサウェイ』は小説『逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の続編であり、映画『閃光のハサウェイ』は映画『逆襲のシャア』の続編だということです。

関連作品が多くあって正しく把握できているか心配ですが、小説版と映画版とは内容が大きく変わるパラレルワールドの関係にあるということのようなのです。つまり、私が知ってしまった小説の結末はこの映画のパラレルワールドでの結末なのかもしれないぞということですよね。ほぼほぼ私の願望ですが。

この『閃光のハサウェイ』の村瀬修功監督は伊藤計劃のSF小説『虐殺器官』のアニメ映画の監督をされた方で、この作品の戦闘シーンのリアルさに「なるほど!」と納得したのですが、この映画『虐殺器官』の結末が原作小説とはまた違ったものになっていたんです。それは「もう一つの可能性」を提示する結末として、私は「あり」だなと感じました。

もしかすると今回の『閃光のハサウェイ』でもハサウェイの迎える未来の「もう一つの可能性」が提示されるということもあるかもしれません。ファンの方たちが読んできた小説通りの結末を迎えるのか、それとも、ファンの方たちもまだ知らない結末が待っているのか、どちらに転ぶかまだ分からないわけです。原作小説に忠実な映像作品となるのか、原作小説から独立した一つの作品として成立していくのか。そんなところにも注目してこの物語を結末までしっかりと追いかけていきたいと思っています。

 

 
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『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』についても語っています。興味を持っていただいた方はこちらからどうぞ。

isanamaru.hatenablog.com