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BL『恋する鉄面皮』4巻(斉藤×富田編)について語りたい

皆さん! 中田アキラ先生の商業BL『恋する鉄面皮』の待望の第4巻が出たんですよ! 2巻で男の色気たっぷりなバーのマスターに陥落したサラリーマンのその後の物語が読めるぞ! ってことで、ガッツリ語っていきたいと思います。

大人の恋愛を描いた作品で、ガッツリと性描写がある作品なので、未成年の方はごめんなさい。大人の方だけこの先をお読みくださいね。

ネタバレが含まれるので、ネタバレダメという方は注意してお読みください。

 

待望の4巻なんです

この『恋する鉄面皮』の1巻では、富田は同じ会社の同僚であり親友の夏目の良き相談相手となり、北川との仲を取り持つように動いていました。

2巻では、公私でサポートした甲斐あってうまくまとまった北川と夏目の様子に自分を振り返り人恋しくなってしまった富田が、行きつけのバーのマスターである斉藤にそんな心の隙を突かれ、「お試し」で体の関係に。挿入なしの擬似的な行為とはいえ、快感を与えられ腕枕で眠る人肌の温もりや安らぎを味わわせられ、文字通り斉藤に陥落していった富田。それまで本気の恋を避けていたサラリーマンが、歳上でバツイチの人生経験豊富な男性からの本気のプッシュを食らったら太刀打ちできませんよね。富田が斉藤に愛されまくり籠絡されていく様子が丁寧に描かれ、かなり大人な物語でした。

しかし、3巻では北川と夏目がメインのため、斉藤と富田が仲良く同棲生活を送っているのが察せられる程度。確かに北川と夏目の2人は好きですよ。しかし私が欲しいのは

斉藤に愛されて身も心もトロトロになっている富田の姿なんです‼︎

このゲスな欲望を、見事に4巻が満たしてくれたました。

 

無自覚の男

3巻の終盤で富田を気にしているような気配を見せていた北川の同僚の田原。4巻では、この田原がガッツリ絡んできます。そうです、ひと波乱起きるんです。

斉藤と富田が同棲を開始して数ヶ月。互いの仕事の時間帯は違っていますが、斉藤の店が休みの日にはたっぷりと時間をかけて愛情を確かめ合うなど、仲良く穏やかに過ごしている様子。とはいえ赤の他人同士です。一緒に暮らすとなれば、よそ行きの顔を続けてはいられません。ちょっと感覚が合わずにモヤモヤすることだって当然出てきます。

斉藤は38歳ということで、30歳手前かと思われる富田とはちょっと歳の差のある大人。富田とは当然経験値が違います。胸の中にあるモヤモヤした気持ちをぶつけたって、斉藤はそのことすら愛おしく感じて余裕で受け止めてくれるだろうと思うのですが、富田はケンカも成り立たなそうだと不満を飲み込んで我慢してしまいます。

引っ越してきてから斉藤のバー以外のお店に寄ることのなかった富田は、会社帰りに最寄り駅で偶然田原と出くわし、流れで飲みにいくことに。以前は北川をよく思っていない様子のあった田原ですが、じっくり話してみると根はいい奴。いつもと違う相手といつもと違う店でお酒を飲むということに、富田は新鮮な気持ちになったのではないでしょうか。

行きつけの店に行きたいと言われた富田は田原を斉藤のバーに連れていきますが、間の悪いことに斉藤は「泊めてほしい」とすがりついて懇願する女性客の対応中。まるで男女の痴話ゲンカのようなその状況に居た堪れなくなった富田はその場を離れ、結局グダグダになったままお開きに。

女性を無下に扱うことはしないだろうとは思っても、その夜斉藤が帰宅しなかったことに富田は心穏やかではいられなくなります。オーナーの娘さんを元奥さまの圭子さんも呼んで夜通しなだめていただけでやましいことは何も無かったのですが、そのことで逆に富田は自分ばかりが小さなことを気にしているようで落ち込んでしまいます。

飄々としているようで、実はひとりで考え込んでしまうタイプの富田。斉藤を信じきれず疑うような想像をしてしまったりして、いい大人だというのに恋愛に振り回されてしまっているようで、自分が情けないような気持ちになってしまったのでしょう。斉藤はゆったり構えているというのに、自分は……。そんな感じになってしまったんじゃないかなと思うんですよね。

余裕のある自分を取り戻そうとするように、その一件以来、飲みに行ったり社食でお昼を食べたりと田原と接点を増やしていく富田。でも問題は「田原が富田に好意を抱いていること」なんですよ。すでにそのことをに気づいている北川と夏目はそんな2人の様子に気を揉んでいますが、富田にはそんなことには全く気付く様子はなく、縮まっていく田原との距離。富田は斉藤に田原のことをあえて黙ったままでいようと考えますが、会話の流れで週末に田原と出かける約束をしていることを知られ、斉藤にやんわりと咎められてしまいます。

きっと富田は、斉藤の手のひらの上でただ転がされているような状態ではいたくなくて、あえて田原を紹介しないでおいたんじゃないかと思うんですよ。恋人がいたって新しい友人はできますし、友人関係全てを恋人と共有する必要もありませんし、斉藤だってそこまで望んではいません。でも富田は斉藤の知らない秘密を持つことに、後ろめたさを感じてしまっていましたよね。斉藤にそこを突かれ、その場の勢いで薄着のまま寒空の中飛び出してしまう富田。

財布も何も持たずに家を出てしまった富田は、寒さに耐えきれず田原の家に。寒さに震えている姿を見かねた田原に勧められるまま、お風呂を借りてしまったりします。気づいていないとはいえ、自分に好意を抱いている相手の家に2人。しかもお風呂上がりですよ。「こらっ! 富田!」って感じです。

富田は斉藤のことを、物言いがいつも穏やかなことも相まって「余裕が服を着たよう」な人間だと思っているようですが、全然そんなことはないんですよね。だっていつだって斉藤は、なかなか踏み出せない富田の手を掴んで引き寄せてきたんですから。

先に惚れたのは斉藤の方。そして今も斉藤は富田にベタ惚れです。富田の体のわかりやすいところにキスマークを付け、家まで富田を送り届けてくれた田原に対してドアから顔を覗かせ自分の存在をアピールして牽制し、田原の家のシャンプーやタバコの匂いをさせて帰ってきた富田に自分のものだと思い知らせるようにいつも以上に激しく抱き潰す。斉藤は大人の男なのでおかしな束縛こそしませんが、それでもひしひしと感じさせる独占欲。どう見たって富田は愛されまくりです。

けれど、人の気持ちを推しはかって自分が一歩引く癖がある富田は、自分のことに関しては途端におざなりになってしまいがち。自分という存在に対する評価が低い感じがします。なので斉藤にめちゃくちゃ愛されているというのに富田本人はその実感はあまり無いし、田原に好意を寄せられていてもまるで気づかないんでしょう。その無自覚ゆえに、すっごく危なっかしいんですよね。

田原に呼び出されて出ていった富田の様子を離れたところから静かに見守る斉藤。田原に告白され、自分の気持ちに向き合うことになった富田は、以前田原に服を借りた時に気づいた「匂い」の違いについて語ります。

 

当たり前にあの人のが自分に浸透してたんだなって…

 

斉藤の匂いが馴染み、その匂いに包まれていることが自分にとって当たり前になっているんだということですよね〜。なんて色っぽい‼︎ ドキドキしちゃいますね。この富田の言葉を聞いて、斉藤はうれしくて仕方なかったんじゃないかと思います。

田原との話を終えた富田を、無言のまま両腕を広げて待つ斉藤。きっと、以前なら斉藤の方から富田を抱き寄せていたんじゃないかと思うんです。でも斉藤は「おいで」という感じで富田が来てくれるのを待ち、富田はそんな斉藤の胸に自分から飛び込んでいくんですよ。

斉藤を特別な存在とは思っていても、自分の気持ちを持て余し気味だった富田。しかし、好きだと田原に告白されたことで自分の気持ちに向き合った富田は、自分が斉藤に深く愛されていること、そして自分も斉藤に対して強い想いを抱いていることに改めて気づき、そのことをようやく認められたのだろうと思います。

 

優しい当て馬

この4巻では、北川の同僚の田原が当て馬として富田と親しくなっていきます。メインのカップルをかき回し引き立て、結果的に2人の絆を強める役回りの当て馬さん。

この田原は富田に好意を抱いてはいますが、彼に恋人がいることはわかっていますし、その邪魔をするつもりはないのです。初めて同性を好きになってしまった戸惑いもあり、好意が溢れ出してしまってはいましたが、自分から気持ちをアピールしようとはしていませんでした。富田と一緒に過ごせる時間があるだけで十分といった感じだったんです。なのに富田は、田原にわざわざ恋人は男性だと言って動揺させたりしちゃうんですから、罪作りですよね。

正直でいようとする富田にますます心惹かれる田原。しかし偶然会った斉藤と会話をして、かなわないと悟ってしまいます。それだけ斉藤と一緒にいる富田は良い表情をしていたのでしょう。だから田原は富田に想いを告げますが、それも自分の気持ちを整理して踏ん切りをつけるため。そんな田原に、ごまかさずちゃんと自分の気持ちを言葉にして応える富田。

富田に恋をしたことで、性別なんて関係なくどうしようもなく惹かれるステキな人がいること、そして自分が惹かれた人が誠実で真っ直ぐな人だということを知った田原。彼は告白することで、自分の抱いた想いは間違いじゃなかったと納得して前に進むことができるようになったのではないかと思っています。

 

『恋する鉄面皮』の2巻について以前語っています。ご興味を持ってくださった方はこちらからどうぞ。

isanamaru.hatenablog.com