観て聴いて読んで書く

マンガ、アニメ、ゲームなど好きだと思ったものについて無節操に書き綴ります

同人誌のお値段への疑問に感じることを語りたい

皆さんは、同人誌を作ったことがありますか? 自分で作ったことはないけれど、買ったことならあったりしますか?

私個人は同人誌を出していたことがありましたし、今も購入はする人なので、時々定期的に「この同人誌の値段高すぎなのでは?」みたいな話題がTwitterで流れてくるのを見ると、同人誌の値段に疑問を持たれちゃうことが残念になってしまうんですよね。きっと同人誌を作る人、買う人それぞれに見えているものが違うんだろうなと思うので、同人誌のお値段への疑問が出てくることについて、私個人が感じることを語っていきたいと思います。

 

同人誌と商品の違い

皆さん普段普通に買い物をしますよね。必要なもの、欲しいものをお店に行くなり通販サイトなどで探すなりして、購入となるわけです。でも同じものでも高いところもあれば安いところもありますよね。お金に頓着しなくていいリッチな人ならわかりませんが、同じ物を買うなら安い方がいいし、同じ値段でも特典が付いているとうれしいし、やっぱりできることならお得なところで買いたいと言うことで、ほとんどの方は販売店をある程度吟味していると思います。

それって、同じ商品(もしくは似たような商品)が他のところでも売っているという前提があるからなんですよね。あっちでもこっちでも買えるから吟味できるんです。

でも同人誌ってそういった一般の商品とは違ってあちこちで売っているわけではないので、値段を比べて入手先を決めるなんてできません。それに、何よりそんなにのんびりとしていたら品切れになってしまいます。しかも類似品なんてものは存在しません。全てが限定品なんです。

同人誌の入手ルートとしては、イベント、通販サイト(作家さまが登録しているサイトに限る)があります。コミケなど同人誌即売会と呼ばれるイベントで同人誌を売ってるわけではありますが、一般の商品のようにガッツリ儲けを含ませて価格を決めて「利益を得る」ために売ってるというよりは、「同人誌の制作費を手に取ってくれた人たちにも少し分担してもらう」という感覚で値段を付けているという感じが強いんです。つまり原価の回収ですね。なのでやっていることは同じでも、積極的には「販売」という言葉を使わずに「利益を得ることが第一の目的ではないよ」という気持ちを込めて「頒布」って言い換えていることが多いんですよね。

 

同人誌と一般書籍の違い

じゃあ同人誌の一般書籍との違いはどこにあるの? と思う方もいるかと思います。

一般書籍はコミックだと500円くらい、文庫本は300ページ超えても600円くらいとか、このくらいの値段だなっていうイメージが皆さんの中になんとなくあると思います。なので「同人誌ってページ数少ないのに、同じくらいかむしろ高い値段だったりするのはなぜ?」みたいに疑問に思うのもわかる気はします。でも同人誌と一般書籍は同じ本の形をしていますが別物だと考えてほしいんです。

一般書籍は出版社を通して制作される出版物で、何万部と刷って世に出されています。だって会社が売り出す「商品」なわけですから。

一方、同人誌は出版社を通さない個人の出版物です。描(書)いているのは、学生や企業で勤務するなど別にお仕事をしている方など一般の方が多いと思いますが、プロの方が出されていることもあります。ですが、原稿を用意するのも印刷所に申し込むのも通販サイトに登録するのも全部自分でやっていますし、それらの費用は自分もち。自腹です。だから同人誌を発行するときに一気に大きな額をお支払いすることになります。私個人が同人誌を発行していたときは、クレジット分割払いでお願いしてましたね。クレカありがとうって感じでした。

物って少しだけ作って売るよりも、材料をたくさんまとめて仕入れて大量生産して売る方が安くできるんですよね。それは本も同じ。印刷するために、印刷機・製本機を確保して紙やインクを用意して、データをチェックして刷り上がりをチェックして製本の不備がないかチェックして。部数が多くても少なくても多くてもやることは同じです。部数が違っても同じことをやるわけですから、部数を一度に多く刷ったほうが全体にかかる金額は大きくなりますが、一冊あたりの価格としては安くなるんです。

でも同人誌は発行しているのは個人。同人誌を出すためお金を貯めていたりしても、企業と使える金額を張り合うことなんてできません。お財布が許す限りの部数を頑張って刷っても、一般書籍と発行部数で並ぶのは難しいですよ。たとえ何千部も刷ったとして、全部をさばけるのか、在庫をどこに保管しておくのかという問題も出てきますし。なので一般書籍と同じ感覚で同人誌のお値段を見ないで欲しいなぁと思います。

 

なぜ同人誌を買うのか

そもそもなんでわざわざ同人誌って買うの? って思う人もいるでしょう。

確かに今ってネットがあれば本なんて出さなくたって直接個人が発信できますよね。TwitterやInstagramなどSNSには素敵なイラストやマンガが溢れていますし、小説投稿サイトだっていっぱいあります。ブログや個人のサイトで公開するという方法もあります。読む方としては、無料ですし何よりお手軽ですし、ネットでの公開ってうれしいですよ。普通の本だって電子書籍で買うことが多いし、ネットで見られるからいいじゃんって思うのもわかります。

でもネットで公開されているものって、突然非公開になったり削除されてしまったり、サイト自体が消えて無くなっていたりするんですよ。それって自分じゃどうにもできないじゃないですか。ブックマークしていたのに、どうあがいてもその作品にたどり着けない悲しみといったら……。やっぱりね、そういう悲しい出来事を防ぐためには紙の本が一番なわけですよ。現物を保持していれば、自分がそれを手放さない限りずっと手元に残り続けるんですから。

同人誌って制作する側も楽しんでいます。小説を書いたりマンガを描いたり、評論したり考察したり、イラストや写真をまとめたり。自分で発行するものですから、内容も体裁も自由です。自分の好きなこととそれに向ける情熱を、そのままダイレクトに形にすることができるので、完成した本を手にしたときの達成感、そして自分の本を手にしていただけた時の喜びというのは、例えようがありません。感想なんていただけた日には舞い上がってしまいます。だってそれは誰かに自分の「好き」を受けとめてもらえた、誰かと「好き」を共有し合うことができた、ということなんですから。

でもその達成感や喜びを感じるために、同人誌を発行する皆さんは頑張っているんです。勉強や仕事をちゃんとこなしながら、必死に時間を捻出して原稿を執筆しているんですよね。

作品を一つ作り上げるってとっても大変なことです。「ダメだ〜」と諦めたり飽きちゃったりして、完成まで至らないってことも多々あります。作品をネットに上げて終わりにもできるのに、原稿を書くだけでなく様々な手配をして本という形にするということは、相当な熱意がないとできないこと。同人誌はそれを発行する方の情熱の結晶なんです。

でもいくら熱意を持っていても、1人でそれを保ち続けることはとても難しいですし、その熱意がいつ他のものへ移るかわかりません。同人誌を発行している多くは、別に本業を持っている方達。職業としているのであれば違いますが、そのジャンルが好きでなくなってしまって同人誌を作らなくなったとしても、それは仕方ないこと。こちらでどうにかできることではありませんし、あれこれ言うべきものじゃありません。つまり、同人誌は一期一会のものなんですよ。

そう思うと、熱意を胸に寝る間も惜しんでグッとくる御本を制作してくださる作家さま方に、心の底から感謝と尊敬の気持ちが湧き上がります。

イベントでは作家さまを前にして緊張もしますが、私は作品を生み出してくださることへの感謝の気持ち、これからの創作を応援する気持ち、そして自分もその情熱をしっかり受け取ったことが伝わるようにお支払いをしているつもりです。なので、仕様が凝っていたり特典がついていたりすると、ちゃんと赤字が出ないような値段を付けているのか、むしろ心配になってしまいます。きっと同人誌を買われる多くの皆さんも、同じような気持ちじゃないかなと思います。

同人誌の値段について「高いんじゃないか?」と疑問に感じるというのは、まだ自分の心に響く同人誌に出会っていないということではないでしょうか。同人誌の値段に疑問を持ってしまう方が、1日でも早く「どんな値段であろうと絶対手にしたい!」と思うくらいに惹かれる同人誌や作家さまに出会えるといいなと思っています。