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『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』について語りたい【2】学級選択と士官学校

皆さんは『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』をプレイしたことがありますか?

「もうひとつの物語」と銘打たれた本作では、『ファイアーエムブレム 風花雪月』(以下『風花雪月』本編)で描かれていた、士官学校に集った生徒たちが国の未来をかけて三つ巴でぶつかり合うことになる戦いを描きながらも、新主人公シェズを置き『風花雪月』本編でも実現しなかった「if」の世界の全く異なる展開を見せていきます。

今回は、ゲーム序盤の分岐点である学級の選択とそのことによって感じることなどを中心に、このゲームについてさらに語っていきたいと思います。

 

ゲームスタート

『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』(以下『風花雪月 無双』)をいよいよ始めるぞ! ということで、トレーラー PVのイメージが強かったこともあり、まずは男主人公を選択しデフォルトの名前シェズでスタートすることにしました。

始めてすぐに驚いたことは、主人公が喋ること。『風花雪月』本編での主人公であるベレト(ベレス)は、ほぼ喋ることのない無口なキャラクターでした。会話はしますが字幕のみで進行してあまりにも喋らないため、声優の方がちょっと気の毒になるくらいでした。

しかし『風花雪月 無双』ではの主人公シェズはよく喋ってくれます。男主人公シェズの声は畠中祐さん。ちょっと掠れたような引っ掛かりのある感じが特徴的。畠中さんが演じられている役の中で私が知っているもののイメージから、少しやんちゃな感じになるのかなと思っていましたが、シェズの喋り方はとても穏やかで聞いていてかなり心地よいんですよ。傭兵としてずっと生きてきた青年にしては、仲間たちとの会話でのシェズは優しい物言いをしており、非常に気遣いのできる子だということが伝わってくるんですよね。しかもかなりさっぱりとした性格で、遺恨を溜め込むことがない感じがとても爽やか。シェズならばどこの陣営に入っても仲間たちと無理なく馴染んでいくだろうなと納得できます。ベレト(ベレス)以外の主人公なんて認めないという熱烈な方も、このシェズには好印象を抱かずにはいられないんじゃないかと思います。

物語は、このシェズのいる傭兵団と「灰色の悪魔」と恐れられる凄腕の傭兵のいるジェラルト傭兵団が剣を交えるところから始まります。「灰色の悪魔」とは、紛れもなく『風花雪月』本編の主人公ベレト(ベレス)のこと。序章からいきなり本編の主人公と『風花雪月 無双』の主人公とが戦うことになるんですが、ベレト(ベレス)が容赦無くて良いんですよ。敵側から見たベレト(ベレス)ってこんな感じなんだな〜と感激するほど、とにかく強いし怖いんですよね。シェズは一方的に押されて、もう負けは確実のところまで追い込まれてしまいます。

この『風花雪月 無双』の主人公であるシェズは、本来であればベレト(ベレス)との戦いで敗れていたはずの若くて未熟な傭兵なんですよね。『風花雪月』本編では、彼はここで命を落としていたんだろうと思います。しかしその時、彼に不思議な力が宿り絶対絶命の危機を脱することになるんです。ここが「if」の世界への入り口とも言っていい場面です。

強さを身につけ次こそは「灰色の悪魔」に勝つと決意したシェズ。彼は、森で3人の少年たちと「偶然」に出会い、盗賊に追われていたところを助けます。彼らはアドラステア帝国の次期皇帝エーデルガルト、ファーガス神聖王国の次期国王ディミトリ、レスター諸侯同盟の次期盟主クロードの3人だったのです。

3人の級長との出会い

級長さんたち3人の身分を知って驚くシェズ

 

まあ普通驚きますよね。シェズの反応は正しいなと思います。

『風花雪月』本編での序章タイトルは「必然の出会い」。しかしこの『風花雪月 無双』は「偶然の出会い」となっています。ベレト(ベレス)は必然、シェズは偶然。本当なら傭兵シェズは彼ら3人と出会うことはなかったのだということなんでしょう。なかなか細かいですね。

エーデルガルト、ディミトリ、クロードの3人がセイロス聖教会の拠点であるガルグ=マク大修道院に併設された士官学校の生徒たちであったことから、シェズは半ば強制的にガルク=マクに連れていかれることに。そしてそこで待ち受けていた大司教レアやセテスによって、士官学校の生徒として受け入れることが強引に決められてしまいます。

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職員勢揃いの圧が……

 

一見すると、シェズに対してあれこれと良くしてあげているようにも見えますが、これには未来の元首たちを命の危険に晒したという不祥事を外に漏らさぬための口封じの側面もあるんですよね。この場面でのレアやセテスら大人たちの胡散臭い感じ、良いですね。

士官学校の関係者が集まり、シェズは一気に士官学校の説明を受けていきます。『風花雪月』本編と違って、どんどんいくぞって感じ。なので、最初の選択である「どの学級に入るか」の決断をすぐに迫られることになります。

エーデルガルトが級長の黒鷲の学級を選ぶか、ディミトリが級長の青獅子の学級を選ぶか、クロードが級長の金鹿の学級を選ぶか。選ばなかった学級の生徒たちはいずれ敵となると考えると、迷ってしまいますよね。

この『風花雪月 無双』で初めて「風花雪月」の世界に触れる方は、どの学級を選んでもいいと思うんです。シェズはどの級長さんにも好印象を抱いていますし。実際、どの学級を選んでも級友たちは良い子ぞろいですし、シェズもすぐに打ち解けて「仲間」って感じになっていきます。安心して直感を信じて学級を選んでほしいと思います。

が! 『風花雪月』本編をプレイ済みの方は、ちょっと注意が必要かなと思います。本来なら死ぬはずだったシェズが生きのびたように、この『風花雪月 無双』の世界は「if」の世界です。そうじゃなければパラレルワールドのような世界です。『風花雪月』本編と同じキャラクターたちが登場しますが、彼らは『風花雪月』本編とは違う環境に置かれ、違う経験を重ね、違うことを感じていくことになります。同じキャラクターであっても、この『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』の中の彼らは、あくまでも『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』の世界で生きている彼らなのであり、『風花雪月』本編の彼らとは別人だというべき存在なんです。

「if」というのは「〜であったらどうだったか」という世界であると同時に「〜ではなかったらどうだったか」の世界でもあります。「もうひとつの物語」で自分の思い描いたようなプラスの展開ばかりではなく、自分にとってマイナスに感じられる展開も描かるとしても、それは当然なんですよ。だって別の世界の物語なんですから。

で、なんだかんだ言いましたが、私自身は発売日まで体験版で3学級とも進められるところまで進めた後に製品版に移行したという経緯もあって、今日は金鹿、明日は青獅子、そして黒鷲というように結局3学級を同時進行でプレいしていたんですよね。私がクロード推しということもあり、金鹿のプレイ時間を一番多くして最初にクリア、次に青獅子、黒鷲としていきましたが、途中でどの学級がどこまで進んで何が起きているのか混乱してしまうところがあり、ちゃんと落ち着いてプレイするべきなんだなと反省しているところです。

 

で、士官学校はどうだった?

『風花雪月 無双』の士官学校の日々は、制服を着崩すこともせずきっちりと着ているシェズの初々しさにも、生徒を連れていることを忘れていそうなイエリッツァ先生の鉄壁のマイペースっぷりにも慣れる間も無く、あっという間に過ぎてしまいます。なぜならアドラステア帝国では権力争いによる内乱が起き、ファーガス神聖王国では王位継承に関する内紛が起き、レスター諸侯同盟では隣国のパルミラの大軍に攻め込まれるというように、同時多発的に各国で問題が発生するんです。

各国の貴族の子息子女である士官学校の生徒たちは、問題に対応するため自分の国にそれぞれ帰らざるを得なくなり、シェズは「元々傭兵だしな」ってことで、自分の選んだ学級の生徒たちの国で起こったゴタゴタにお付き合いすることに。そうこうしているうちに3国で争う戦争が勃発、シェズはなし崩し的に傭兵として参戦することになります。各級長さんの抱える事情も、各国の状況も深くは知らないシェズの巻き込まれ感。戦争ってこんな感じで始まるんだろうなって思います。

本作は無双ゲームですから、戦いがメインです。敵を倒してナンボ。士官学校でみんな仲良くなんてしてないで、主人公たちにはさっさと戦乱の中に身を投じてもらいたいわけですよ。だって無双ゲームですから。

士官学校での日々が短いということで、シェズはここでの他学級の生徒たちとの交流がほぼ無いため、戦場で敵将として現れる彼らに対しての思い入れはなく、プレイヤーも敵として倒すことにためらいや葛藤といったものは抱かずに済みます。「なんでこんなところで俺たちは戦わなきゃいけないんだ‼︎」みたいな感情ってドラマチックですが、無双のように戦い自体を楽しむゲームには必要ないんですよ。士官学校の時間が少ないおかげで、敵となった他学級の生徒たちと戦うことになっても、彼らの強さを純粋に受け止めることができますし、倒した時の達成感を味わうことができます。爽快ささえあります。めちゃくちゃストレス発散できます。

また、『風花雪月』本編では、仲良くなった他学級の生徒(級長とその腹心以外)をスカウトして自学級に引き込むことができましたが、『風花雪月 無双』ではスカウトはできません。だってそこまで仲良くなっていませんし。しかしその代わりに、戦場で説得して自軍に引き込むことができるんです。

ただし、説得できるのが全員ではないのがポイント。もう戦争に突入しちゃってますし、誰も彼もが祖国を裏切って自軍に入ってきてくれる方が不自然ですしね。ということで、戦場で説得できるキャラクターの人選は、かなり現実的。元々国のしがらみがないキャラや祖国に忠誠心が薄いキャラクターもいますが、地理的な理由で領地を守るためなどのように寝返ることに納得できる理由があるキャラクターのみが説得可能となっているんです。ちゃんと考えられているなと感じます。

 

信頼関係がいつ構築されるのか

『風花雪月』本編では第2部は5年後。開戦から5年経ってもまだなお終結が見えない状況に、心が痛くなってしまいます。まだ幼さの残る少年少女だった生徒たちは、すっかり大人となって戦場に立っており、たくましく成長した生徒たちの姿に胸が熱くなるわけです。

ですが『風花雪月 無双』での第2部は2年後。短いのは士官学校の期間だけではないんですね。第2部では級長さんたちは3人ともそれぞれの国の元首となっていますが、本編よりみんな若いんですよ。みんなほぼ20歳そこそこ。『風花雪月』本編よりもさらに戦場での将としても人間としてもまだまだ経験が足りていない状態なんです。なので、未熟な傭兵であるシェズと、同じくまだ未熟な仲間達は、同じ軍の人間として戦うことを通して共に成長し信頼関係を構築していくわけなんです。

『風花雪月』本編に比べて士官学校での期間が短く生徒たちの交流が浅いままで終わってしまっていることや、本編よりもさらにキャラクターたちが若い時点での物語になっているということは、それぞれの学級のシナリオにも大きな影響を与えていくことになります。

 

ということで、まだまだ『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』について語り尽くせていないので、次回はこのゲームの1番の特徴である戦闘について語りたいと思います。

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