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BL『純情でなにが悪い』について語りたい

皆さんは冬縞しぐれ先生の商業BL『純情でなにが悪い』という作品をご存知ですか? この作品、素敵な初体験を夢見るはじめとタチ専門のデリヘルで働くリョウタの物語です。

タイトルに「純情」とあるのにもかかわらず、はじめがデリヘルを頼むところからいきなり物語が始まります。とってもキレイな絵でセックスの描写が楽しめる作品です。

ということで、今回はこの『純情でなにが悪い』について語っていきたいと思います。

 

ガッツリ性描写がある作品なので、未成年の方はごめんなさい。大人の方だけこの先をお読みくださいね。

ネタバレを含みますのでネタバレ苦手な方は注意してお読みください。

 

理想の脱処女シチュエーション

この作品の主人公篠原はじめ20歳には、決して譲れない理想がありました。

それは「脱処女のシチュエーション」

どんなことでも初めてってとっても大事ですよね。初体験というものは一生に一度きり。最初の一回で上手くいければ、その後もずっと楽しめますし、失敗したり嫌な思いをしてしまえば、その後二の足を踏んで積極的になれなくなったりしますし。だからこそ、相手に大事に優しく愛されたい!その思い、すごくわかります。

しかし今まで交際相手がいたものの、はじめのパッと見ビッチっぽい外見が災いしてか、経験無しであることを相手に面倒がられてしまい、はじめは処女から抜け出せずにいました。ならば経験豊かなプロに頼めば確実だと、彼はホテルでタチ専門のデリヘルを依頼します。

はじめがシャワーを終えてすぐに、指名したリョウタが部屋に到着。準備が間に合わず、はじめは髪も乾かせていない状態で慌ててリョウタを招き入れることに。腰にタオルを巻いただけのはじめの姿に、ガッツいていると勘違いしたリョウタは、初めてだというはじめの言葉も聞き流して、いきなりプレイを開始。はじめが本当にあまり経験が無いことに途中で気付いたものの、リョウタはそのまま最後まで自分のペースでセックスを進めていってしまいます。

リョウタとのセックスは確かに気持ちは良いものではありました。けれどセックスの間、彼ははじめの要望を何ひとつ聞こうとしてくれなかったんです。

ずっと理想の初体験を思い描いていたはじめにとって、初体験は気持ち良ければそれでいいやって片付けられるようなものじゃないんですよ

自分の気持ちが少しも反映されなかった最悪な初体験を、無かったことにしようとするはじめ。しかも、がっついていると勝手に勘違いした上に自分本位なセックスをして帰っていったリョウタが、自分と同じ大学に通う学生の諒太であると判明。さらに凹むはじめですが、それでも懲りずに再度デリヘルを依頼。今度こそはと部屋をキレイに掃除して到着を待っていましたが、来たのは指名した結城ではなく、なぜか再び諒太。手配ミスってやつですね。

 

前回してやれなかったことしてやるから
なんでも言えよ

 

お仕事モードのスイッチが入り、急に雰囲気が変わった諒太に流されるように、身体を委ねていくはじめ。

指名されていた結城のシフトが空いていれば交代もできますが、結城さん、売れっ子さんのようです。それに、諒太は前回の指名で、はじめが脱処女の理想のシチュエーションを思い描いていたことも、どうやら自分がそれをぶち壊してしまったらしいことも知っているので、ちょっと悪いことしたなーくらいは思っていたんだと思います。そして、何よりはじめが可愛かったんでしょう。はじめの思い描く理想を叶えてやったらどんな反応をするのか、諒太は知りたくなったんじゃないかと思うんですよね。

前回とは打って変わり、名前を呼んで抱きしめてくれ、ヤダだと言ったら止まってくれて、するときは恋人繋ぎもしてくれて、とはじめのして欲しいことを確認しながら一つひとつ叶えていってくれる諒太。とうとうはじめは、自分の思っていた理想のシチュエーションを体験することができたわけです。念願が叶い、たくさん気持ちよくさせられて、諒太に身も心も絆されてしまい他の人なんて…みたいな展開が待っていそうじゃないですか。

ですが、自分の思い描いていたシチュエーションを体験できたことに感激し、「さすがプロだ」と諒太のセックスの技量を褒めちぎるはじめ。そして大満足した彼は、ぜひともこの体験を他の人ともしてみたいと、長文の感想も添えて改めて結城を指名するんです。

 

もしかして恋愛下手な奴なのか?

これが面白くなかったのが諒太の方。確かに諒太とのセックスがとても良かったと、はじめに褒められてはいるんですよ。希望を全部叶えて気持ち良くさせてもあげられたはずなのに、今度は他の人を相手に追体験しようと、はじめが自分を指名してこなかったことに諒太は納得できません。毎回違う相手としてもセックスは上手くならないと言ってはじめを納得させ、同級生のよしみで500円で来てやるから俺を呼べという強引な理屈で押し切り、諒太はじめ専用の500円デリヘルを爆誕させてしまうんです。

もはやこの時点で、諒太ははじめが自分以外の誰かとセックスするということを許容できなくなってしまっているんですよね。500円デリヘルということではじめの部屋を訪れているので、もちろんセックスはしますよ。ですが諒太は、はじめに食事を作ってあげたり、次の日の朝早いからと言ってはじめと同じベッドで寝てしまったり、大学でもはじめと一緒に過ごすように。さらにははじめが妙に距離の近いサークルの先輩に自分のことを「経済学部の(セックスの)天才」と紹介したことに、セックスが上手けりゃそれでいいのかとムッとするし、その先輩がいる飲み会に行こうとしていることにモヤモヤするし。

諒太、好きじゃん。はじめのこと、好きすぎるじゃん。

だって、諒太はデリヘルでバイトしているんですよ? 給料がいいからという理由で選んだバイトだとはいえ、 初めてでも気持ちよくさせる自信があるとも言っていましたし、技術(?)を褒められたら、それなりにはうれしいんじゃないかと思うんです。でも諒太はセックス以外のところで、はじめに認められたくなっているんですよ。セックスで始まってセックスを理由に続いている関係ではあるけれど、500円の受け取りもいい加減になり、何もしないでただ泊まるだけのことも出てきたり。それって純粋にはじめとただ一緒にいたいと思っているからですよね。

そんな様子に、はじめは諒太が自分に好意を持っていることを察します。でも諒太自身は、自分の胸にある気持ちの正体が何なのか、気づかないんですよ。あれ? もしかして諒太、お前本気で誰かを好きになったことがないな? ってなりますよね。自分が恋に落ちてしまうとか、諒太は今まで考えたことなんて無かったのかもしれません。

変に馴れ馴れしい先輩の存在が心配で、飲み会に行ったはじめを迎えに行った諒太。案の定はじめは、家に行こうと先輩に誘われていました。先輩からはじめを救い出したその時に、「他の誰かにはじめを渡したくない」ってことを諒太は言うべきだったんですよ。でも彼は自分の中にある焦りや嫉妬、苛立ちなどの感情がはじめへの恋心のせいだと気づけていません。だから勢いとはいえ、「彼氏欲しいならあいつと付き合えば」なんて言葉を口にしちゃうんですよね。

諒太は自分のことがきっと好きだ。そして、自分も諒太のことが……。はじめが自分の気持ちに向き合い、想いを認めようとし始めたタイミングでの、諒太の「彼氏欲しいならあいつと付き合えば」発言。そりゃはじめも怒りますよ。

大学で顔を合わせてもはじめに避けられてしまい、会話もままならない状態で3週間。雪の降るなか、はじめの部屋を訪れた諒太。その表情がいいんです。寒さで鼻を赤くして頭や肩に雪を積もらせて。きっと長い時間逡巡して、でもやっぱり諦められず、意を決してはじめの部屋のチャイムを押したんですよね。

諒太は自分の気持ちをどうにかはじめに伝えようと懸命に言葉を探っていきます。はじめに背中を押され、ようやく「好きだ」と口にできた諒太。

 

キスの仕方忘れた

 

デリヘルの仕事の相手ではなく、本当に自分の好きな相手であるはじめとキスしようとして、諒太は真っ赤な顔でヘナヘナになっちゃうんですよ。物語の冒頭で余裕たっぷりに自分のペースでセックスしていった奴が、キスで照れるような可愛い奴になっちゃうなんて! 

お客だったはじめに恋をしたことを察したデリヘルの先輩の結城に「純情だねえ」と言われて諒太は怒っていましたが、本気の恋に純情になるってとってもステキなことだよなって思いました。