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BL『モブから見たBL』について語りたい

皆さんは青井しお先生『モブから見たBL』という作品をご存知ですか? 普通なら物語は主人公たちに焦点が当たり、モブの皆さんについてはあまり語られることはありませんよね。ですがこの作品は、タイトルの通り2人の恋を見守るモブの皆さんたちの目線メインで物語が進んでいくんです。CPを取り巻く周りの皆さんが、その時に何を思って何をしているのか、ちょっと興味湧きますよね。

ということで、今回は『モブから見たBL』について語りたいと思います。

性描写がある作品なので、未成年の方はごめんなさい。大人の方だけこの先をお読みくださいね。

ネタバレを含みますのでネタバレ苦手な方は注意してお読みください。

 

モブの皆さん、お疲れ様です。

この『モブから見たBL』に出てくるのは、高校の同級生、大学の先輩後輩、会社の上司と部下という3組のCP。

高校生同級生CPは、医学部志望で眉目秀麗な加瀬慶一と性格がとても可愛らしい内山涼介の2人。焦ったくなるほどに初々しくて奥手な子たちですが、周囲の温かい目に見守られながら着実にしっかりと愛を育んでいきます。嫌われないように大丈夫かと相手の気持ちの確認とってから手を繋いだり、相手に相応しくならないとと勉強を頑張ったり、高校生らしく進路をどうするか決められずに悩んだり、ちゃんと一つひとつ段階を踏んで前進していく青春ラブストーリーをしてくれています。彼らの恋を見ていると、あまりのピュアさに心が浄化されていくのを感じます。

大学のCPは同じサークルの先輩後輩で、女性にとてもモテる教育学部1年生の西野隼人と押しに弱く絆されやすい経済学部2年生の早川翠の2人。彼女が欲しくて仕方ないはずの翠ですが、マンスリー彼女と言われるほど女性には不自由していない隼人からのまさかの猛アプローチで、あれよという間に陥落してしまいます。とはいえ隼人と翠の会話の様子を見ていると、こちらが楽しくなってしまうくらいにすごく相性良さそうなんですよ。3組の中では唯一ベッドシーンがあるCPです。まあ、大学生ですからね。ハマってしまったんですから仕方ないです。

会社の上司と部下のCPは、優秀かつタレントなIT企業の若き専務の凛堂史哉とその専属秘書の吉田唯臣の2人。部下たちがすっかり慣れて驚かなくなってしまっているほど吉田に対するラブが溢れ出て止まらない史哉を、秘書として唯臣がきっちりしっかり支えています。社会人ですがというか、社会人だからこそというか、簡単には先に進めないんですよ。それぞれの立場がありますから。史哉は部下たちに「残念なイケメン」と言われてしまっていますが、唯臣と一緒にいる時はいつもニコニコとうれしそうなんですよね。一番微笑ましい関係の2人です。

この作品では、この3組のCPをモブとして見守っていくことになります。名前が出てこないモブの回もありますが、一つひとつのお話はほぼ毎回CPを見守るモブの名前でタイトルがつけられています。

この3組のCPを見守るモブの皆さんの個性や関係性こそが、この作品の面白いところなんです。

彼女と行く予定だった遊園地のチケットを加瀬たちに譲ってあげるなど、身を削って献身的に2人の仲を応援してあげる、慶一と亮介の共通の友人の辻浩司。彼らに対しての察しは異常に良いのに、彼女に対しては鈍感なおかげで、彼女との仲が度々危うくなってしまっています。

慶一の幼なじみで涼介と仲がいい清水奏太。彼はたまたま手を繋いで帰っている慶一と涼介の姿を目撃し、涼介が最近付き合いが悪い理由を察することに。幼なじみとはいえ、あまり慶一とは仲が良くなさそうですが、涼介に小さい頃の慶一の様子を話して聞かせてあげたりしています。慶一と涼介の仲がグッと大きく前進するきっかけを作るのも彼です。

また、慶一に想いを寄せていたものの、彼が涼介に恋していることを知ってからは二人を遠くから見守り続け、時には彼らを邪魔する障害を取り除くなどし、恋の進展に喜びを噛み締めている朗らか女子高生ストーカーの凛堂香澄。ちなみに名字からもわかるように、史哉は香澄の兄です。

誰とははっきり名前を口に出さないもののすごい勢いで翠にアプローチしまくる隼人の話を、適度に受け流しつつ後押しもさりげなくしてあげる、翠の友達の眞島浩之。面白がるわけでもなく、けしかけるわけでもなく、淡々と2人の関係を受け入れる彼との会話のやり取りを通して、翠に対する隼人の思いの本気度をビシバシ感じられます。

アパートの薄い壁を通して、隼人に鳴かされている翠の声を一晩中聞くハメになったりしながらも、人生の先輩として(?)2人の関係を受け止めてくれている、隼人の隣人でゲイのチャメ姉。隼人も翠も男同士は初めてだろうと、必要なものアレコレが揃えられているかを心配したり、足腰ヘロヘロになった翠を介抱してあげたりと、めちゃめちゃ優しい。チャメ姉お気に入りです。

毎朝唯臣にプロポーズしにくる史哉を、当たり前の光景として受け入れている、秘書課の石井久野。なぜか秘書課に来て唯臣に構ってもらおうとすることについて、史哉に特別何か言うことはしません。とはいえ、彼らは専務という役職にある史哉に遠慮して何も言えないということでは一切なく、むしろ史哉が楽しそうにしていられるように邪魔しないでいてあげている感じ。上司が機嫌いいと助かるなというのを通り越して、もはやカルガモの親子を見守るみたいに保護対象の生き物を保護する感じに近いようにすら見えます。

そのほか、慶一と涼介の高校の先生や、隼人と同じ教育学部の女子たち、史哉のスキャンダル写真を撮るようにライバル企業の御曹司と彼にスクープを依頼されたカメラマン、転職を考えている女性や、イヤイヤ期の娘を抱えているママというような方たちも登場します。

BL作品に登場したモブの皆さんたちにも、作品内では明らかにされていないだけで、それぞれにちゃんと名前もあれば人格もあるし生活だってあって、その流れの中でCPの2人とたまたま同じ空間にいた場面を、作品が切り取っているだけなわけなんですよね。細かに描写されないだけで、モブの皆さんの胸の中にはCPと関わることで思うことや考えることがあるんですよ。その部分を『モブから見たBL』では重点的に描いてくれているんです。

読んでいるうちについつい、自分がもしもモブの1人として作品に登場するとしたら、どのCPとどんなシチュエーションで居合わせたいかと妄想したくなってきちゃうんですよね。ちなみに慶一と涼介のCPはゆるがなそうですし、隼人と翠のCPは見る限り何だかんだうまく恋人としてやっていきそうなので、もし自分がモブとして見守るなら史哉と唯臣の2人ですかねー。名も無き総務部の女子社員あたりになって、秘書課にいる仲のいい同期から2人の様子を聞いたり、たまたま社屋のロビーで2人が話している横を通り過ぎたりしたい! で、史哉のプロポーズを唯臣が受け入れた暁には、今まで情報を提供してくれていた秘書課の同期の子と祝勝会を開いて一晩中飲み明かしましょうかね。

ぜひぜひ皆さんも、この『モブから見たBL』を読みながら、「自分がこの世界のモブだったら……」という妄想をして楽しんでほしいなと思います。