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『ファイアーエムブレム 風花雪月』について語りたい【11】士官学校という鎖

「ファイアーエムブレム」シリーズ中の名作『ファイアーエムブレム 風花雪月』。今回は、なぜフォドラ3国の貴族がガルグ=マク大修道院の士官学校に集うのか? ということで、「白雲の章」について語りたいと思います。

 

士官学校での日々

アドラステア帝国出身者の「黒鷲の学級」、ファーガス神聖王国出身者の「青獅子の学級」、レスター諸侯同盟出身者の「金鹿の学級」。各国の貴族の子息子女が、ガルグ=マク大修道院に併設された士官学校で学ぶために集められるというのは、なんだか不思議ですよね。

この設定じゃないと、「どの学級の担任になるか」が決められないということは当然理解していますが、それでもどこかに不自然さは感じてしまいます。このモヤモヤとする違和感については後ほど語ることにして、まずは士官学校での過ごし方について語っていきます。

第一部にあたるこの士官学校での日々は「白雲の章」という名称。その名の通り過ごし方はどの学級もほぼ共通で、それぞれの色合いにはまだ大きな差は無く、まさにこれから染め分けられていくといった感じです。

教師となった主人公は生徒たちに指導を行い、課題に学級として取り組むこととなります。予定はカレンダーで提示され、月曜日に生徒たちを指導、そのほかの曜日は大修道院の中を散策、月末に出撃というのが毎月の基本的なサイクルとなります。

生徒たちを目指す兵種に近づけるよう指導するために、彼らの「やる気」を上げておく必要があります。また連携攻撃の威力を上げたり他学級の生徒をスカウトするためにも支援を深めたいですし、先生自身も強くならなきゃいけません。戦闘だけでは足りない部分を、このガルグ=マク修道院での時間で補っていくわけです。

 

散策

散策では会話以外にもたくさんできることがあります。ただし行動できる回数が決まっているので、効率よく交流をし、やる気や支援を上げながら生徒たちと自身の能力アップに繋げていきたいところです。

 

支援を深めたい時に

お茶会/落とし物・贈り物を渡す/一緒に食事/一緒に料理/お悩み相談/一緒に入浴

「お茶会」では、こちらがどんな話題を振るかで成果が変わります。なので初めのうちは私も、「誘う相手の好みの茶葉や話のネタは何か?」と調べてお茶会に臨んだりしていました。が、途中から「私がやってるのは恋愛シミュレーションゲームじゃないし」などジレンマを感じるようになり(笑)、要は面倒くさくなって自分の勘を信じることにしました。生徒との会話が上手くいかず微妙な雰囲気になるのも、それはそれでよしです。

「一緒に入浴」というのは、エキスパンションパスの購入でできるようになる行動です。サウナなので性別に関係なく一緒に入浴可能。遠慮はいりません。体がポカポカと温まって健康的になるということでか、個別指導に入浴効果がプラスされます。

面白いなと思うのが「落とし物」。ここの人たちは全員、これでもかってくらいにあちこちに何個も落とし物するんです。世話が焼けますね。ハンカチ・手袋といった定番の落とし物から、枕・卒業証書など「そんな物をそこら辺に落とすなよ!」と叱りたくなる物まであり、生徒たちの人となりが分かると誰の落とし物か推測しやすくなっていきます。落とし物は青い光で存在を教えてくれるので、主人公にせっせと拾わせていくわけですが、その青い光の中には植物の種やミミズ、お肉などアイテムも混ざっています。それらもありがたく拾ってあとでちゃっかり有効活用することになりますが、主人公が道端でミミズなどを拾っている姿、想像すると可笑しいですね。

 

生徒のやる気を上げたい時に

一緒に食事/落とし物・贈り物を渡す/授業後の質問に回答/池で魚釣り/講習を受ける/休む

「一緒に食事」では生徒たち2人を誘えます。効率よくやる気を満タンにでき、生徒たちの支援も進んで良いことづくめ。主人公は個人指導のために1日に何組もの生徒たちと食事することもしばしば。大食漢でなければ、ここの教師は務まりませんね。生徒が料理を前にして言うセリフはそれぞれ決まっていますが、誘った2人の組み合わせによっては特別な会話が発生することもあります。

主人公は生徒たちに料理をご馳走するために、「魚釣り」をして材料を調達します。生徒にやる気になってもらおうと、先生はけっこう必死です。

釣った魚などを大修道院にいる犬猫ちゃんに食べさせることもでき、お礼をもらえたりします。犬は3種、猫は15種。猫派の私は大満足です。それぞれ「リーガンフェリス」「エーギルフォン」など生徒の名字にちなんだ品種名となっています。自分は女主人公でプレイしていますが、餌をあげるときに地面に膝をついて犬猫ちゃんのご機嫌を伺うように首を傾げてみたりしている様子がかなり可愛いです。

 

生徒を強化したい時に

温室で植物を育てる/聖人像を強化/合唱/講習を受ける

温室で育ててもらった植物からは、贈り物に使える花、トマトやカブなどオーダーメニューに使える食材等が収穫できますが、それだけじゃないんです。岩ゴボウや生命の木の実などのステータス強化アイテムも収穫できちゃうんです。「育成」という項目で、種を預けた後にお金をかけた手厚い育成をしてあげると、強化アイテムの収穫できる率が上がるってことなんですね…。より効率よく強化アイテムを入手して生徒たちを強くしてあげたいという熱心な方は、ちゃんとお世話を頼むと良さそうです。

「合唱」では、参加させた生徒2人の支援と信仰が上がります。気楽に信仰をあげることができますが、1日1回1組しか歌わせることはできません。歌っているのはもちろん、女神を讃える歌なのでしょう。嫌々歌う子もいればノリノリの子もいます。

講習は最大6人まで同時に受けられ、出席するメンバーは自動で決められます。講習内容、出席メンバーを見比べて、どの講習を受けるか決定するといいです。

 そのほか散策では、色々な人から主人公にクエストが入ります。情報を集めて欲しいというものから、恋文を届けたり探し物をしたり、中には出撃する必要があるものも。クエストを遂行すると、名声値がアップします。困った人は助けねばということですね。

 

士官学校のイベント

勉学だけでなく、お楽しみの行事も用意されています。主人公が生徒と参加する大きなイベントとしては、次の2つがあげられます。 

 

鷲獅子戦

4月に一度、3学級がぶつかり合う戦闘はしていますが、生徒たちとの戦闘を練習する意味合いが強くて参加人数も5人のみでした。この10月の鷲獅子戦は学級対抗の総力戦となり、モブさんもいます。とはいえ、あくまでもこれは模擬戦。伝統行事ということで、レアも見守る中での戦闘となります。

鷲獅子戦に臨むディミトリ

ディミトリ殿下の剛腕っぷりは承知しています

鷲獅子戦に臨むクロード

何やら企みがありそうな表情のクロード

鷲獅子戦に臨むエーデルガルト

気合も戦意もバキバキなエーデルちゃん

他学級の生徒たちと戦えるちょうど良い腕試しですし、勝った学級には褒賞も出るということで「勝つのはうちの学級だ」と級長さんたちが張り合うなど、感覚としては運動会に近いのかも? 開戦直前のムービーでの級長さんたちの言葉は、端的に彼らの性格が出ています。

鷲獅子戦の戦闘後はお互いの戦いっぷりを褒めたり食堂で全学級集まって食事会を行ったりと、和気藹々ととても楽しげに終わります

それが、後々胸にグサグサとくることになるんですが……。

 

白鷺杯・舞踏会

12月にはガルグ=マク大修道院の落成記念日があり、舞踏のイベントが続きます。これぞ貴族って感じですよ。いいですねえ、優雅です。

舞踏会に先駆けて、学級対抗で踊りを競う白鷺杯というイベントが行われます。この白鷺杯で優勝すると踊り子の職種が獲得できます。誰を出場させるか主人公が任命をし、出場して優勝したその生徒のみが踊り子になれます。踊り子の踊りは腕をクルクル回したりしてかわいいです。

舞踏会は他学級の生徒と出会いが持てる機会。しかも、「舞踏会の夜に女神の塔で、未婚の男女が願い事をすると女神が叶えてくれる」という言い伝えも! なんとも言えない学生っぽい甘酸っぱさです。誰と一緒に踊ろうか、と生徒たちにソワソワとした雰囲気が漂います。

舞踏会はムービーがあるんですが、これがまたよく出来ているんです。

ーそれぞれモブの生徒とペアで踊っているエーデルガルトとディミトリ。彼らは背中合わせで視線を合わせないまま。彼らの様子を離れて見守っている主人公。クロードがそんな主人公の手を取り、踊りの輪の中に連れ出すー

 

舞踏会で踊るエーデルガルトとディミトリ

こんなに近くで踊っていても互いを見ない二人

舞踏会でのクロード

主人公を踊りに誘うクロード

ムービー初見時は金鹿初プレイ中だったので、他の学級では主人公をその学級の級長が踊りに誘うのかなと思っていましたが違いましたね。クロードの手の握り方が男主人公と女主人公とで違います(!)が、ムービー自体は1パターンのみ。でも、それが実はポイントなんですよね。

 

エーデルガルト
女性なので、舞踏会では踊りに誘われる側。でも学校の行事ですし誰も咎めないと思いますが、しっかりと貴族の教育を受けてきた彼女は、自分から主人公を誘うことはしません。ペアになっている男子生徒の顔を見つめ、自分の背後で踊っているディミトリのことを気にもかけていません。

 

ディミトリ
男性なので踊りに誘う側ですが、主人公が女性でも誘ってきません。なので先生は壁の花状態。教師である主人公を踊りに誘うのを遠慮しているのか、それとも主人公がポツンとしていることに気づいていないのか……。ディミトリはそこらへんに疎いのかなと思わせます。

 

クロード
宴は好きでも、お上品な舞踏会は苦手。自分と同じように舞踏会に馴染めないでいる主人公を見つけ、笑顔で踊りに誘います。彼だけ周りが見えていますね。男主人公だろうと女主人公だろうとクロードが踊りに誘うことに変化はなく、自分が踊ることよりも皆で共に楽しむことを重視していると感じられます。

 

まさに三者三様ですよね。この舞踏会のムービーで、3人の級長の性格の違いや関係性を上手に伝えているんです。

 

その後、疲れてしまった主人公は舞踏会を抜け出して女神の塔に向かいます。生徒たちとあまり歳が変わらないですし、言い伝えが頭に残っていたんでしょう。この展開、かわいいですね。

塔に到着すると、そこには門番さんに「大切な人」と言われて主人公が顔を思い浮かべた生徒が現れます。この場面では女神の塔の言い伝えに絡めて生徒が主人公と2人きりで会話をするのですが、それぞれの性格が非常によく出ているんです。門番さんとの会話のところでセーブをしておけば女神の塔で会う生徒が選び直せるので、興味のある方は比較してみるのも良いかも。リンハルトとの会話は、ぜひとも聞いてもらいたいと思っています。

 

なぜこの士官学校に

アドラステア帝国から独立を勝ち取り建国されたファーガス神聖王国。王国からの干渉を排除して諸侯の共同体となったレスター諸侯同盟。各国の貴族の子息子女たちは、このガルグ=マク大修道院に併設された士官学校で学ぶために集まります。

彼らは将来、各国の政治的権力を握るであろう存在。そんな彼らが士官学校の生徒として同じ敷地で学び、寝食を共にして交流を持つということは、フォドラの平穏を保つために大いに意義を持っていると思われます。

でも袂を分かち別の国に分かれたわけですし、士官学校は各国内にそれぞれ設立させておくべきものではと思うのに、ちょっと不思議ではありませんか?

まだフォドラにアドラステア帝国のみがあった古い時代、為政者をレアの元で学ばせセイロス教の教えの理解を深めさせたのが、この士官学校の始まりなのでしょう。そうすることで、フォドラの地にすむ人々にセイロス教の教えを広め、同じ信仰を持つことによって国としてのまとまりを強めていったのです。

その後、アドラステア帝国が分裂する形でファーガス神聖王国とレスター諸侯同盟が生まれますが、為政者となった各国の貴族たちは当たり前のようにガルグ=マクの士官学校に子どもを集めます。敬虔なセイロス教徒からすれば、少しも疑問は出ないのかもしれません。しかしそれは、セイロス聖教会に一方的に都合の良い状況だと思うのです。

士官学校の生徒たちは、課題としてセイロス騎士団と共に盗賊討伐などに出撃します。騎士を目指す生徒たちにとって、セイロス騎士団の戦いを間近に感じることは非常に有意義なことでしょう。また、敬虔なセイロス教信者であれば、セイロス騎士団と行動を共にすること自体が誇らしいことだろうと思います。

レアの目的はそこにあるんです。

大司教であるレアの元で学び、レアの命を受けて課題という名の戦いに出るということを1年間繰り返すことによって、士官学校に入った貴族の子供たちにはそれが当たり前のこととなっていくのです。まるで、セイロス聖教会に飼い慣らされていくように……。

つまり、政治的権力を持つ前の貴族の子息子女たちを集めて、1年間かけてレアの命じたことが絶対だと思考に刷り込み、セイロス教の従順な教徒として仕立てて国に返すことこそが士官学校の第一の役割なのです。そうすることによって、各国へのセイロス騎士団による武力行使を含めた干渉を受け入れさせることが容易となり、セイロス聖教会に対する反乱が起きてもすぐに押さえ込むことが可能です。

レアはセイロス聖という信仰を以て、このフォドラの地の国々をコントロールしてきました。それこそが、女神の眷属たるレアの考える「フォドラの平穏を保つための方策」だったのです。

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基本的にレアは人間を信用していないんだなと

この手法は決して間違ったものとは言い切れませんし、確かに今まで功を奏してきました。ですが、女神ソティスの意識を宿した主人公が現れます。もともと主人公はレアの意志で創り出された女神ソティスの器としての人間でした。しかし真に女神ソティスの力を受け継いだ主人公の戦いはレアの思惑を大きく超え、大いなる理想と野望を抱く若い君主たちと共に、新たなフォドラのあり方を創り出すものとなるのです。

遥か昔にフォドラの大地に女神ソティスが降り立ったことから始まったフォドラの歴史は、主人公の出現によってまたここに再現されていくのです。

 

次回からは『ファイアーエムブレム 風花雪月』の主人公の出生について黒鷲・青獅子・金鹿のそれぞれの学級がたどる道について語っていきます。ご興味を持ってくださった方はこちらからどうぞ。 

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