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『ID: INVADED イド:インヴェイデッド』について語りたい イドの音

これまであおきえい監督・舞城王太郎脚本のオリジナルアニメ『ID: INVADED  イド:インヴェイデッド』全13話+百貴と鳴瓢の関係について語ってきました。

今回はこの作品の中の音や音楽について語りたいと思います。

JIGSAWED

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  • 発売日: 2020/01/13
  • メディア: Prime Video

 

こだわりのガンマイク

この『ID: INVADED  イド:インヴェイデッド』という作品、モノローグ以外はガンマイクで収録をしているということで、あおきえい監督がヘッドフォンでの視聴をお勧めするツイートをされています。

ガンマイクだとそんなにも音に違いが出るのでしょうか? 全然詳しくないので、ガンマイクってどんなものかと、ちょっと調べてみました。

マイクと言われてまず頭に浮かぶのは、ライブやレコーディングでアーティストが使っているようなものかなと思います。では、ガンマイクというのはどういう場面で使われているものかというと、ドラマやロケで音声さんが長い棒の先っぽについたフワフワしたカバーで覆われた(?)長細いマイクを画面に映らないように頑張って高く掲げて持っている、アレでした。

ガンマイクは集音性が高くて、長い竿状の器具の先に装着すれば、離れていても狙った音をピンポイントで拾うことができるという優れモノ。だから外でのロケで周りに人がたくさんいる状況でも、出演者の方の声がしっかりと録れているのだそうです。すごいですね。

家にヘッドフォンが無かったので、音量をちょっと上げたくらいで他に特に何もせず、普通に視聴していましたし、最初のうちはガンマイクを使って音にこだわった収録をしているなどということも知らずに見ていたのですが、それでもなんとなくぼんやりと「ちょっと違う気がするな」と感じていました。セリフとセリフの間がきれいな無音すぎず、キャラクターの呼吸を感じるというか。

過去に何度か劇場で劇を観る機会があったのですが、あまり大きくない劇場で舞台がとても近かったため、演じている俳優の方たちの声や息遣いがダイレクトに伝わってきて「すごい!」と思いました。その時の感覚を、この作品を視聴していて思い出したのです。スッキリとしたシャープな印象の絵柄で非現実のイドの世界を描いた映像を見ているのに、なんだか鳴瓢の声が妙に耳に近く生々しく聞こえるという、とても不思議な感覚。

時々テレビなどで紹介されるアフレコの様子というのは、声優の方たちが台本を片手に、立っているマイクに向かって演じているというものです。ガンマイクを使った収録がどのような感じなのか全く分かりませんが、動き回ることもできたでしょうし、通常のマイクを使っての収録時よりも声優の方たちはマイクの存在を気にせずに自然に演じることができたのかもしれないなと想像しています。そしてその自然な演技の中に込められた微妙なニュアンスを、集音性の高いガンマイクでしっかりとキャッチしていたからこそ、アニメを見ているのに生の演劇のようにリアルに声を感じることができたのではないでしょうか。

 

2021年3月31日追記

2020年度に最も活躍した声優を称える第15回「声優アワード」にて、津田健次郎さんが主演男優賞を受賞されました! 『無限の住人-IMMORTAL-』と『ID: INVADED  イド:インヴェイデッド』がその受賞選考の対象作品だったようです。

こちらの受賞者インタビューの記事では、津田さんが『ID: INVADED  イド:インヴェイデッド』のアフレコの様子などについて語ってくださっています。

webnewtype.com

 

イドの世界を彩る音楽

劇伴

私たちが生活している中で、何か作業中などに気分に合わせて自分でBGMを流す事はあっても、その場面に合った音楽が自動で流れてくるなんてことはありません。だから、嬉しい時に弾むような曲がかかったりするのは、本当は不自然なもののはず。

あえて無音という作品は別ですが、一般的に映像作品にとって音楽は無くてはならない欠かせないものです。映像を通して視覚から伝わってくる登場人物たちの感情を、音楽が聴覚を通して私たちの心により深いところにまで沁み渡らせてくれるのです。

以前にも書いていますが、この『ID: INVADED  イド:インヴェイデッド』を私が見るきっかけとなったのは、オフィシャルトレーラーを見たことでした。第一弾のそれは謎めいた映像で、だからこそというべきか、強く心に残ったのはその音楽でした。神経質に細かく奏でるバイオリンと鼓動のように硬く刻むチェロやコントラバスの音色の対比がとてもカッコ良く、どこか不穏でこれから何が起きるのかとゾクゾクさせられ、一回聴いてすぐに気に入ってしまいました。

ストーリーや絵柄も大切ですが、作品に没頭しているところを邪魔するような、場違いで耳障りな音楽が流れてきたら台無しですよね。作品の中でどんな音楽が流れていたのかで、同じ場面でも意味合いが大きく変わってきます。劇伴と呼ばれる劇中に流れる音楽は、作品の印象を大きく左右する要素です。好きな作品に流れていた音楽を聴くと自然と脳裏に場面が浮かびますが、それはその音楽が作品に寄り添う優れた音楽である証拠。劇伴が素晴らしいものだからこそ、その作品がより深く鮮明に心に残っているのです。

その劇伴というものが、どのようにレコーディングしているのか、その様子の映像がexciteニュースで紹介されていました。

 

 

 こちらを見ると、プロの方が集まってすぐにちょこっと指示を出されただけで一発でOKになっているようにも感じられますが、実際はそうではないはずです。

学生の時にオーケストラ部に入っていた個人的な経験からですが、弦楽器だと弓の動かし方(弓の先から弾き始めるか、手元から弾き始めるかなど)によって音のニュアンスが変わってきますし、個々で違っている曲の解釈を指揮者の考えている曲のイメージに合うように楽器ごとのバランスや弾き方の細かな指導を出され、何度も練習を繰り返して演奏を練り上げていきます。なので、ただ集まって楽器を弾いているだけなのではなく、短い時間だとしても、この映像の前には分奏と呼ばれるパートごとに分かれての練習をするなどしてメンバーの間で意思疎通を図り、演奏を仕上げていく過程があったはずです。

私はチェロを弾いていたので、どうしても低音の楽器が気になってしまい、プロの方を素人と同じように考えてはいけないなと分かってはいても、刻む音の粒をハッキリさせて欲しいとか色々言われたりしたのかもなぁ、などと映像を見ながら想像してしまいました。

このような劇中の音楽の制作風景を垣間見ることができると、作品に流れる音楽に対して愛着がさらに湧いてきますね。

 

ミスターフィクサー

何期にも渡って放映される作品だと、1クールごとにOPもEDも曲が変わりますよね。曲の変更が作品のイメージや物語の展開と合っていると感じられれば良いのですが、「今回の曲はあまり作品に合ってないな」と感じてしまうと、作品も曲もどちらの印象も散漫になってしまいます。私自身、途中で変わったOP曲にガッカリした経験があります。なので個人的には、できれば放映期間中はOPもEDも同じ曲で通してもらえたら良いのになぁと思っています。

『ID: INVADED  イド:インヴェイデッド』のOPはSouさんの書き下ろしのオリジナル曲「ミスターフィクサー」。EDはMIYAVIさんのアルバム「NO SLEEP TILL TOKYO」収録の「Other Side」。MIYAVIさんの曲は他にも劇中に流れる挿入歌として「Samurai 45」と「Butterfly」が使われています。

アーティストの方に曲の制作依頼をする時に作品の情報を伝え、そこからインスピレーションを広げて曲を作ってもらうという流れのようですが、Souさんにはこの作品の全話のシナリオが渡されていたそうです。そのため、この作品のために書き下ろされた「ミスターフィクサー」は、この作品の世界観とアーティスト個人の感性とが混ざり合い、深く結びついていることが感じられます。現実とイド、鳴瓢と酒井戸など、さまざまな二面性が描かれる物語とリンクする、スタイリッシュで冷めているようでいて、なのに切なさも感じる素敵な曲で、2つの世界を結びつける螺旋を描いているようなピアノの旋律が印象的です。

Souさんの新しいアルバムが発売されるということで、収録される「ミスターフィクサー」のMVも解禁されています。MVは『ID: INVADED  イド:インヴェイデッド』のメインクリエイターの手によるものです。

 

 

このMVだけを観ても、不思議な世界に迷い込んだような映像に魅了されると思いますが、『ID: INVADED  イド:インヴェイデッド』を観ていた方がこのMVを観ると「もう一つのイド」の世界に来たような感覚になるはずです。

OP曲であるとはいえアーティストの方の個人の楽曲ですから、全く関連性のない映像でMVを作ることも可能だったはずです。でも、こうしてイドの世界と繋がる世界観のMVを観ていると、この『ID: INVADED  イド:インヴェイデッド』という作品を、Souさんも大切に思ってくださっているのだなと感じられてうれしくなりました。

 

前回は百貴と鳴瓢の関係について語っています。興味を持っていただいた方は、こちらからどうぞ。

isanamaru.hatenablog.com