皆さんは、鈴丸みんた先生の商業BL『ゴールデンスパークル』をご存知ですか? 今回は、この作品について語りたいと思います。
ピュアな男子高校生2人の恋を描いたお話ですが、ガッツリ性描写がある作品なので、未成年の方はごめんなさい。大人の方だけこの先をお読みくださいね。
【単話売】ゴールデンスパークル 1 (ドットブルームコミックスDIGITAL)
- 作者:鈴丸みんた
- 発売日: 2018/02/23
- メディア: Kindle版
ネタバレが含まれるので、ネタバレダメという方は注意してお読みください。
ウブすぎる男子高校生
主人公の上原日葵(うえはらひまり)は女性が苦手。なのに小学校では女子たちにモテてしまい、中学では女の子の話をしたがる同級生の男子と話題が合わず、人避けで金髪にしてみれば、また別のタイプの女性が寄ってくるということで、男子高に進学。入学直後の自己紹介をきっかけに、前の席の麻田楽(あさだがく)と親しくなります。1人も女子がおらず、気の合う楽とつるむ快適な毎日。日葵は楽のおかげで学校が楽しいと口にします。
そんな折、日葵がまだガラケーを使っているのを見たクラスメイトたち。ネットなんてしないから不便はないと言う日葵に、「あん時はどうしてんだよ」と言い出します。パソコン? まさか紙派? まさか生身調達? 派手な金髪にしている外見から、日葵を遊んでいるはずと勝手に思い込んだクラスメイトたちは下ネタで盛り上がっていきます。その話題はその場を鎮めようとした楽に飛び火。しつこく絡むクラスメイトたちを振り切り、楽は日葵を連れて教室を出て行ってしまいます。
ああいう話題苦手でさ 上原もだろ?
クラスメイトの話から察するに、中学では相当モテていた様子だというのに、楽の口から出た意外な言葉。しかし、日葵は彼のさらに上を行っていました。
苦手っつうか意味わからん やりちんてなに? 紙派がどうとかもわけわかんねえ お前意味わかった?
言葉を失ってしまう楽。冗談などではなく、クラスメイトたちが何の話題で盛り上がっていたのか、本当に日葵が全く理解していなかったのだと気づいた楽。彼らが話していた言葉の意味を、日葵に丁寧に説明してあげます。
エロ本とかAV…ってアダルトビデオだよな? 18歳未満は閲覧禁止されてるだろ
派手な金髪のヤンキーかと思いきや、大真面目にそんなことを口にする日葵に、エロ本もAVも見ずセックスもしないでどうやって「処理」してるのかと、楽まで思わず尋ねてしまいます。たしかに今どきここまでウブだと、むしろ心配になりますよね。
まさかずっと夢精なんてことはねえだろ?
そのまさかなんですよね。日葵は、朝起きると何故かパンツが汚れている謎の現象を夢精だと知らないまま、おかしな病気かもと1人で悩んでいたのです。あまりにも奥手すぎる日葵。見かねた楽は「処理」の仕方を教えてやると、自分の寮の部屋に日葵を連れていきます。
2人きりの部屋。何も知らない日葵にオナニーの仕方を教えてあげるため、楽は日葵の服を脱がせて自分の手でしてあげます。日葵にとって、今まで全く知らなかった感覚だったはず。楽に肩を抱かれ、彼の手によって初めて日葵は射精したのです。
この場面、ちょっと間違えてしまうと楽が下心だらけみたいに見えてしまう所だと思います。しかし、性的なことに無関心すぎて極端なほどウブな日葵を、楽は「かわいい」とは言いますが一切バカにしないですし、そんな日葵につけ込もうともしないため、嫌な感じのエロさは感じさせません。
夢精は変な病気なんかじゃなかったし、楽に教わったように自分で「処理」すれば朝に下着が汚れているなんてことも無くなる。悩みが解決した日葵は楽を「マジでいいやつ」と評し、我ながらいい友だちができたと満足げ。
ですが、問題はまだ残っていました。楽に教えてもらったように日葵は自分の手でオナニーを試みるものの、全然うまくいかなかったのです。
お前の手じゃないとできん
「わからなかったらまた教えてやる」という言葉を素直に受け止め、何も考えずにこんな文面のメールを楽に送りつける日葵。メールを受け取った楽は戸惑っていますが、日葵は自分にとって当たり前のことを伝えただけなので、全然気持ちよくならなかったと平然と口にできてしまいます。彼の中では楽が教えてくれたのはあくまでも夢精対策であって、気持ち良いものではあったものの、日葵の中では性的な行為とはまだ結びついていないのです。
人にしてもらうと気持ちいいという楽の言葉を聞いて、自分がしてもらったように過去に楽も誰かに同じことをしてもらったことがあるという事実に気づき、日葵の中で対抗心が芽生えます。自分だって楽にもいい思いをさせてやりたいとムキになる日葵。
楽はそんな日葵を膝の上で向かい合わせに抱きかかえると、自分と日葵のペニスを一緒に握ってしごき始めます。思わず楽にしがみついてしまう日葵。
やっぱ麻田の手 きもち…っ
それ以来、彼は毎日楽の部屋に行くようになります。とはいえ、日葵は足りない知識を得たいという知識欲が勝っており、楽の方でも教えてやっているというスタンスを崩さずにいるため、2人はあくまでも気の合う友だち同士のまま。楽の部屋に行くかどうかは日葵の意思次第で、楽の方から誘うことも断ることも一切ありません。いつも日葵の希望だけを聞いて自分からの要求は口にしようとしない楽に、モヤモヤとした気持ちを抱く日葵。
そんな時、楽の中学での同級生の女子たちに学校帰りに偶然出会い、声を掛けられます。かなり仲良さげな様子で女子と話しているどころか、どこかに遊びに行こうと誘われる楽。しかし彼女たちの誘いを楽が断ったことで、日葵は自分を選んでくれたという優越感を感じていることに気づきます。
今日は…部屋に行きたい…
またベッドの上で向かい合わせで楽の膝の上に座り、彼の手でしごいてもらう日葵。ちゃんと見ないと1人でできるようにならないと、と楽は言いますが、日葵は彼にただ触れて欲しくなっていたのです。体の最もプライベートなパーツに触れて2人で気持ち良くなる行為が、楽の言う「やらしいこと」とは結びつかなくても、特別なものであるということを日葵は感じるようになっていたのでしょう。
こういうのってダチ同士ですんの?
別れ際に楽に訊ねる日葵。自分の心の中にある楽に対する想いが、ただの友だちに対するものではないと、日葵が自覚し始めた場面です。
本当の自分は
中学入学の頃から背が高く目立っていた楽。人当たりの良いこともあり、友だちはすぐにできるほうでした。しかし、周囲がいつの間にか女の子についての話題をするようになるにつれて、楽はついていけなくなっていきます。そんな話題をするのはやめろと言ったことで、楽は仲間から浮いてしまうようになります。
バスケ部も辞めてしまった楽は、ずっと優しく接してくれていたマネージャーの先輩と、この状況から逃げるように付き合うことにします。しかし彼女を好きとは思っても、感じてしまうとてつもない違和感。女子から告白されても、楽からは誰も好きにはなれないまま。
流されて付き合っても長く続くわけはなく、何人もの女の子たちと付き合ってはすぐに別れる状態になり、楽は気づけば部活だけでなくクラスの友だちとも馴染めなくなってしまっていました。そして誰もいない所からやり直そうと選んだ男子高で、楽は日葵と出会ったのです。
熱を出して学校を休んだ日葵に担任教師から頼まれた届け物を渡すため、彼の家を初めて訪れた楽。日葵は熱のせいか頬が赤く、少しいつもと様子が違います。楽はどこかぎこちない雰囲気を和ませようとしますが、クラスメイトが彼がヤリチンと言っていた話題になり、弁解する流れになってしまいます。そんな彼に対して、膝を抱えて座ったまま、思いがけない言葉を口にする日葵。
みんなこんなしんどい思いしながら友だちと一緒にいんの? 楽もそうなんの?
…オレのこと考えすぎて熱出たりする…?
なんて可愛い告白‼ ︎楽も思わず日葵の頬に手を添えてキスをしようとしますが、その瞬間、クラスメイトに言われた「ホモ」という言葉が彼の頭をよぎってしまいます。
日葵の体をを突き放し、逃げるように彼の家を飛び出す楽。クラスメイトにとっては、楽と日葵の2人がいつも一緒にいることを、冗談でそう言い表していただけの言葉。でもそれは楽にとっては、自分自身も気づかずにいた「本当の自分」を言い当てる言葉でした。
今まで女の子を好きになれなかった理由も、自分も日葵も互いに友だち以上の感情を抱いていることにも、気づき理解してしまった楽。もしもそのことが周囲にバレてしまったら、自分だけでなく日葵までも孤立してしまうことになってしまう。そのことを恐れた楽は、露骨に日葵を避けるようになります。
体調が戻り学校に来たものの、楽に冷たい態度を取られ、席替えで席も離れてしまった日葵。彼は何本もの恋愛映画を見て、楽が自分にキスをしようとした意味を必死に考え、確かめようと決意していました。なのに喧嘩したわけでもないのに、楽にどうして素っ気なくされるのか。しかし楽は「からかっていただけなのに、マジになられても困る」と彼に冷たく言い放ちます。
そんな突然の楽の変化に戸惑いつつも、どうにかして2人で話す機会を持とうと、日葵は以前会った楽と同じ中学だった女子たちに協力してもらって楽を呼び出し、改めて彼に尋ねます。
オレがお前のこと好きだっていったら なんて答えんの?
日葵が大事だからこそ、ただの冗談だと嘘をつく楽。日葵は彼の嘘を見抜いていますが、それでも溢れ出してしまう涙。そんな日葵の表情を目の当たりにして、楽はもう嘘をつくことができなくなったのでしょう。泣きながら駆け出してしまった日葵を追いかけ捕まえます。
どうしたら仲直りしてくれんの? マジになんねえようにしたらいい…?
涙を流してそう尋ねる日葵に、今度こそ唇を重ねる楽。そりゃそうですよ。こんなにも可愛いことを言われたら、誰だってキスするしかなくなるじゃないですか。
自分が女性より男性が好きだということが人に知れたら日葵まで巻き込むのではないかと怖くなったと、楽はすべてを打ち明けます。そのことを知り、さらに涙を流す日葵。
…なんで周りがこわくてお前と離れなきゃならねーんだ
恋愛に対して疎かったからこそ、変な先入観など持たずに自分の気持ちに素直に向き合おうとする日葵の言葉。楽はこの言葉に、どれだけ勇気をもらったことでしょう。好きだという気持ちをごまかそうとしない日葵の真っ直ぐさを、とても羨ましく感じました。
ゴールデンスパークル
互いの気持ちを伝え合った楽と日葵。
オレらってつまり…友達から昇格したってことでいい?
普通の友だち同士として互いのペニスを扱いてたりしていたわけですから、確かめたくもなりますよね。昇格したらどう変わるのかを日葵に聞き返された楽。
キスしたり、それ以上もしていいならする…みたいな仲に…
「していいなら」という部分に楽の優しさが感じられます。
それ以上ってセックス?
目一杯気を使っている楽に対して、いきなり直接的になる日葵。見ている映画でセックスという単語が出てきたので言葉として知ってるだけで、日葵はその場面を見ても今までドキドキしたこともない様子。
お前とならドキドキすっけど…楽はしてえの? オレとそういうこと
日葵に煽られて楽は彼をベッドに押し倒しますが、そこで問題発生。2人とも男同士のセックスのやり方を知らないのです。ということで、真面目な彼らはネットで調べて要点をまとめる(!)ことにして、その日は解散。要点をまとめるという発想が微笑ましいですね。
日葵はいつかはセックスすることになるのだからと、勉強のため映画のラブシーンを鑑賞することに。その場面に楽とのことを思い出して、日葵は初めて1人でオナニーすることに成功。報告のメールを送りつけたため、楽はまたも日葵のとんでもない内容のメールにまたも驚かされてしまいます。いつも通りに喋っている2人の様子を、「痴話喧嘩もほどほどに」とからかうクラスメイトたち。ナーバスになっている楽は動揺するものの、日葵は全く動じません。日葵は恋愛や性的なことに疎くて少し子どもっぽいようにも感じられますが、彼の気持ちは一切ブレることは無いのです。
こんなオレのことまじで好き?
不安で確かめずにはいられない楽。しかし日葵は好きだから一緒にいるのだと、とてもシンプルでとても正直です。それは、セックスにおいても同じ。それまではずっと経験豊富でリードしていたはずの楽が、いつの間にか日葵に背中を押されながら前に進んでいくようになっています。
ごめ…オレ よゆうない ごめんな…
今まで楽が余裕のあるように見えていたのは、いつもどこかで冷めていたから。きっと彼は、自分を抑えきれずに夢中で誰かを抱きしめたことも無かったのではないでしょうか。楽は日葵に出会ったことで、初めてそのままの自分でいることを恐れずにいられるようになったのです。
この作品の最終話の扉絵は、背中から日葵を抱きしめている楽の表情がとても穏やかで、彼が本当に心開ける相手を得られたのだと感じられる素敵な絵になっています。是非ご覧になっていただきたいなと思います。
前回はPEYO先生の商業BL『ボーイミーツマリア』について語っています。興味を持っていただけた方はこちらからどうぞ。