観て聴いて読んで書く

マンガ、アニメ、ゲームなど好きだと思ったものについて無節操に書き綴ります

同人作家が官能小説を書いた時のあれこれを語りたい【1】

昨年私はご縁とご厚意をいただき、今回のタイトルにあるように、R指定前提の官能小説アンソロジー『十二月恋奇譚』に参加させていただきました! なんとAmazonにて販売中です。すごいですね。

明星先生が主催されたこの美しい表紙のアンソロジーには、12人の作家によるそれぞれの月にちなんだ官能小説が収められており、私はその中で10月を書かせていただきました。

普段は二次創作の小説を書いている私にとって、「官能小説を書くぞ!」と思って書くこと自体が初体験。とても面白い経験になりました。

ということで、今回は二次創作の小説を書いてきた私が初めてオリジナルの官能小説を書いてみて感じたことなど、経験談を語っていきたいと思います。

 

 

まずは同人について

私はひっそり細々と同人活動をしてまして、今はWebイベントに展示やネットプリントなどで時々参加したりしつつ可能な範囲で活動する感じになっていますが、以前は小説で個人誌を制作し、弱小サークルではありますがビッグサイトでのイベントに参加もしていました。

同人活動での創作には一次創作と二次創作があり、私は主に二次創作の方で活動をしています。

 

二次創作とは

二次創作って何かというと、マンガ、アニメ、小説、ゲームなど自分が愛する作品(以下、原作)の物語をさらに空想(妄想)で膨らませ頭に思い描いたものを、自分なりの表現方法で創作していくものです。

ただ、二次創作で面倒臭いのが解釈違い。自分でセリフを考えたにもかかわらず、「このキャラクターはこんなこと言わない!」などと自分自身との解釈が合わず頭を抱えてしまうこともあるんですよ。何言ってるかわからないですね。自分が考えた物語を優先させることを取るか、自分が考える「そのキャラクターのあるべき姿」を守ることを取るかという葛藤。自縄自縛ってやつです。

二次創作は、原作や登場するキャラクターに対する愛情から生み出されるものなので、その源となる原作を蔑ろにしたり、世界観をぶち壊すようなことはしたくないんですよね。

とはいえ、自分の妄想に忠実でありたいのも事実。「原作にははっきりとは描かれてはいないけれどこの2人のキャラはこんなにも深く心が通じ合いわかり合っている素敵なペアなのだからその胸の中で言葉では簡単に言い表すことのできない信頼や友情を超えた2人だけが分かち合える特別な感情を抱いていることは確実だし魂が強く結びついた2人なのだから当然肉体だって深く激しく繋がりあっているに決まってるだろ!」 ってことで、公式が半分目をつぶってくださっているのをいいことに、妄想が爆発した二次創作のR18な小説をせっせと書いているわけです。もはや正気の沙汰じゃないですね。

でも二次創作って、そのくらい原作に惚れ込み夢中になっているからこそ生みだされるものなんですよ。そうやって想像力をフル稼働して生み出された二次創作からは、プラスの感情が伝わってきて幸せな気持ちになれるんです。

 

一次創作とは

同人活動という言葉から思い浮かぶのは、二次創作の方かもしれませんね。でも、もともと同人って「同じ趣味を持つ人」というような意味の言葉。イラストやマンガを描くとか小説を書くなどといった創作自体が好きで個人で活動しているというのも、同人活動に入るんです。原作ありきの二次創作に対して、元となる原作を持たないオリジナルの作品を、一次創作と呼んでいます。今回私が参加させていただいたアンソロジーも一次創作のものとなります。

実は明治時代の文豪たちも同人誌を作っています。島崎藤村や樋口一葉は『文学界』、谷崎潤一郎は『新思潮』、武者小路実篤や志賀直哉は『白樺』という同人誌にそれぞれ参加してるって、学校の授業で習った記憶がうっすらありますよね。明治時代にはまだ二次創作というものが無かったので、彼らも一次創作の同人誌を作っていたわけです。

一次創作は、物語も登場するキャラクターたちも全て、名前から何から全部自分で設定を考えて決められます。なので、元となる原作からあまりにかけ離れた設定になり過ぎて、もはやこれは別物なのでは? というような躊躇が生まれることはありませんし、自分の中にしか正解が無いので解釈違いで悩むということも起きません。自分の思いついた物語のアイデアを自由に好きなだけ膨らませて作品にできるんですよね。文豪たちの名前を出すと途端に高尚な感じになりますが、一次創作は自分だけの世界を生み出すことができる完全にフリーダムな世界なんです。

一次創作の活動ってどこでやってるの? という方もいらっしゃるかもしれませんが、「小説家になろう」などの小説投稿サイトは一次創作の作品をメインにしていますし、「コミティア」といったオリジナル作品に限定したイベントもあります。

 

官能小説を書くことにした

何事にもきっかけというものがあるもの。私が官能小説を書こうと思ったのは、本棚の整理がきっかけでした。

ある時自分の本棚を整理していて、私が持っている官能、エロス、性愛といったものをテーマとして謳った本の中に、不倫や禁断の恋などちょっと不健全な関係性だったりするものはあるんですが、普通の夫婦の話が無いことに気づいたんです。すでに結ばれていてラブラブな夫婦が普通にイチャイチャしたところで、ドラマチックにはならないのでしょう。

私は今まで、男性キャラCPのR18な二次創作の小説ばかりを書いていましたが、別に男女CPが嫌いなわけではありません。それに、普通の夫婦というのは私の愛するCPたちの未来の姿でもあるわけですし、結ばれた後だってずっとイチャイチャしてほしいんですよ。そこで、好き合って結婚したごく普通の夫婦のR18な物語を書いてみたいという気持ちが湧いたんですよね。

でも、創作って締切りとか目標とか急き立たられるものがないと、なかなか取り掛かれないんですよ。イベントに参加することも考えましたが個人誌一冊できるほどガッツリ書けるか不安だし、どのイベントがいいか分からないし、ネットに上げておこうかとも思いましたがpixivじゃない気がするし、個人のサイトは持っていないし、このブログは創作置くつもりで始めたわけじゃないし。あれこれ考えているうちに、「そもそも普通の夫婦のセックスをテーマに書いた作品を読みたいと思う人なんているのかな?」という疑問が湧いてきてしまって、書いてみたい気持ちはあれど、結局何も手付かずのままになってしまっていたんです。

そんな時、Twitterを眺めていて以前二次創作でご一緒したことのある明星先生(@loveofmylifehim)が官能小説のサークルを立ち上げてアンソロジーを企画しているというツイートが目に入ってきたんですよ。出来上がったアンソロジーは文学フリマという文芸作品の展示即売会イベントに出展し、その後電子書籍化もするとのこと。ちょっと迷ったものの、締切も目標も発表の場も確保できるわけだし、これは便乗させていただくしかないだろ! ということで思い切って官能小説アンソロジー『十二月恋奇譚』に参加させていただくことにしたんです。

 

まずは物語を書く準備から

こんな感じで、官能小説アンソロジーの主催者さまである明星先生に締切日や文字数ほか注意点をうかがい、他の執筆者の皆さまにご挨拶をして、いよいよ作業開始。

とはいえ何にも考えなしには書けないので、まずは設定などの構想から。夫婦のセックスを題材に書いてみたいなーと漠然と思っていたものを具体的にしていく作業ですね。

実際に書いていくことを前提に考え始めると、やっぱり普通に仲良く暮らしている夫婦のセックスというだけだと物語として盛り上がらないし、書きにくいんだなと。そこでひとひねりしなければと考え出した設定は、どう転んでも夫婦でセックスについての話をしなきゃいけない展開になるからということで「不感症」にすること。奥さんの一人称で物語を進めていったら、自分も女性だし想像しやすそうだなということで、旦那さんとのセックスで感じられずに悩む奥さんの目線で話を作っていくことに決定。悩んだ末に奥さんがSMに目覚めて「私を縛って」とか言い出して旦那さんも新しい扉開いちゃったりしたら面白そう! と思いつき、ウキウキしながら早速SMについて調べ始めたんです。

SMってどんなイメージ持ってますか? 私の中でSMは、Sの人はMの人を縛って拘束したりするなどしていたぶって加虐嗜好を満たし、Mの人は痛めつけられることに快感を感じるようになる、みたいな淫靡なイメージだったんです。が、相手をケガさせたりできないから力加減とか常に意識してなきゃいけないし、でも気持ち良くさせなきゃだしで、意外とSの人って無我夢中な感じになれなくて気の毒だなとか、むしろSの人はMの人に奉仕している側なんだなとか思い始め、調べていくうちにSMに対して私が冷静になってしまって結局ボツに。

夫とじゃ感じられない妻が第三者に抱かれて感じまくっちゃう、という展開も考えたりはしました。第三者に抱かれるとなると、不倫相手とか見知らぬ男に襲われてとか、確かにそういうのも物語として無しではないですが、それで感じまくっちゃったらむしろ夫とセックスしなくなっちゃうだろうし、不倫とかレイプとか書きたいわけじゃないし、何より夫婦間のセックスの話じゃなくなっちゃうし、で却下。

なんとかして不感症から脱して夫婦での気持ち良いセックスを書いてあげなくては! と悩みに悩みました。で、考えたんですよね。第三者に感じさせられちゃうのが嫌だったら、自分で気持ち良くさせてあげればいいじゃん、と。良いでしょう良いでしょう、まずは自分で、その次は2人でと段階も踏めるしプレイに変化も出るし。これで決定となりました。

大筋が決められたので、次はキャラクターの細かい設定決め。主人公の名前を冷たい感じや純潔というイメージから深雪に、深雪さんの夫を飄々としたさっぱりしたイメージから涼也に決定。そして夫婦っぽさを出すために2人とも三十代と若すぎない設定にし、夫婦間のセックスにフォーカスするため2人の間に子供はいないことにしました。

これから書くのは官能小説なのでセックス描写は必須だなと思いつつも、不感症の深雪さんが嫌だー! 痛いー! 止めてー! ってなってるのはかわいそう。夫の涼也さんの印象も悪くなるし。あくまでラブラブな夫婦にしたいので、深雪さんが嫌がるような描写は避けたいなと。そのためセックスの描写は後半に回すべきと考えて、セックスレス夫婦にすることに。

初めて官能小説を書くというのに、不感症かつセックスレスに悩む人妻深雪さんが主人公というなかなかチャレンジングな設定ですよ。でも乗り越えなきゃいけないものが多いほど、燃えるじゃないですか。絶対深雪さんに気持ちよくなっていただかなくては! と、執筆を開始したのでしたが、完成までの道のりはなかなか波瀾万丈だったんです。

ということで、同人作家が官能小説を書いた時のあれこれを次回も語っていきたいと思います。

 

isanamaru.hatenablog.com