観て聴いて読んで書く

マンガ、アニメ、ゲームなど好きだと思ったものについて無節操に書き綴ります

『勇気爆発バーンブレイバーン』について語りたい②

皆さんは『勇気爆発バーンブレイバーン』(以下『ブレイバーン』)をご存じですか? 自衛隊員イサミ・アオが巨大ロボ「ブレイバーン」に搭乗し、ルイス・スミスやルルを始めとする仲間たちとともに、宇宙からの敵デスドライヴズを倒して地球を守る物語です。現在スーパーロボット大戦に期間限定で参戦し、未視聴の方達を困惑させている模様です。

この作品はクセが強いぞ! というところを前回ネタバレ無しで語りました。が、そんな語りで満足できるはずも無い!

ということで、今回は『ブレイバーン』について、イサミとスミスを中心に今度はネタバレ前提で彼らの軌跡をガッツリ語っていきたいと思います。

 

作品ラストのネタバレ絡めて語っていますので、ダメな方は気をつけてお読みください。

 

出会ってしまったイサミ

日本の自衛隊員であるイサミ・アオ三等陸尉(CV鈴木崚汰さん)アメリカ海兵隊ルイス・スミス少尉(CV阿座上洋平さん)は合同演習で初めて出会います。

冷静沈着で、優秀な働きを見せたイサミと同じティタノストライド(以下TS)パイロットとして友好を深めようと、スミスは次の訓練での勝負を申し込み、イサミもそれを了承します。

朗らかなスミスと無愛想なイサミ。対照的な2人が、これからTSパイロットとして互いの腕前を認め合うことになるのかなーと思ったんですよ。しかし宇宙から突然現れたデスドライヴズによる襲撃が始まってしまい、彼らも戦闘に巻き込まれ、訓練どころではなくなってしまいます。だったらこの危機的状況で、イサミとスミスが力を合わせて敵を退ける展開になると思うじゃないですか。これがまた、違うんですよ。

あまりにも強い敵を前に自衛隊とアメリカ軍は圧倒され、危機に陥ってしまうイサミ。まさにその時、イサミを守るように正体不明の巨大ロボットが現れます。それこそがブレイバーンです。

 

待たせたな、イサミ

 

初めて現れたというのに、ブレイバーンは親しげにイサミの名を呼び、 自分に乗れと促します。 何が起こるのか分からない恐怖を抱きながら、それでもブレイバーンに乗り込むイサミ。

自衛隊員のイサミ、海兵隊所属のスミスとは違い、この襲撃が初めての実戦。だからこそ訓練では良い動きができても、実戦では体が固まってしまったんですよね。しかも敵は宇宙から突然現れ全てが謎だらけ、そして敵と同じように突然現れたブレイバーンに自分の名前を呼ばれるなんて、非現実的すぎて大混乱ですよ。

この時点ではまだブレイバーンが敵ではない確証はありません。正体不明のくせにやけに馴れ馴れしいブレイバーンの言うことを本当に聞いていいのか、当然イサミは疑念を抱いたはずです。それでもイサミはブレイバーンに乗り込むことを選ぶんですよね。

でもこれ、イサミがパニック状態でブレイバーンに言われるまま行動したわけではありません。ブレイバーンはイサミに向かって放たれた敵の攻撃を防いでいました。仲間のTSが歯が立たない状態の今、ブレイバーンなら敵の攻撃に耐えられるということを実感として知ったわけです。 敵味方不明の怪しい存在だし、乗って戦ったとして自分が無事でいられるかも分かりません。でも、イサミは助けたいという気持ちがとても強い人。この時の彼にとって、ブレイバーンは唯一の望みであり、ブレイバーンに乗って敵と戦うという選択肢以外、彼の頭には思い浮かばなかったのだろうと思います。これがイサミのヒーローたる資質なんです。

 

ストレスの素から相棒へ

直々に指名を受け搭乗はしましたが、初めての機体、しかもブレイバーンが自我が強いせいでブチギレながら戦い、どうにか敵を撃退したイサミ。しかし、突然現れたブレイバーンがやたら熱っぽくイサミとの関係について語るなどするため、イサミは敵との関係にあらぬ疑いをかけられて尋問を受けることに。皆を救ったというのに踏んだり蹴ったりです。イサミかわいそう。

イサミはもうブレイバーンには乗りたくないと一度は拒否もしますが、仲間を助けたいという気持ちからブレイバーンのパイロットとして戦うことを決めます。イサミは選ばれたから乗るのではなく、自分自身で戦うことを決意し、ブレイバーンに乗るんですよ。

しかし、ブレイバーンに乗れと言われたから乗ったのにダメ出しされたり必殺技名を叫ばさせられるし、戦闘中コックピット内に 「ババーンと推参! バーンブレイバーン」がBGMで流れてうっとおしいし、自分には覚えもないのにどれほど深くつながりあっているのかやけに際どい表現で熱く語られるし、敵と戦っていただけなのになぜか服が破けて全裸にされるし。今までこんなひどい扱いを受けたことがないと思うんですよね。イサミかわいそう。

なぜ自分が選ばれたのか、どうして自分じゃなきゃダメなのか。ブレイバーンに執着される理由についてイサミには一切覚えが無いため、困惑も苛立ちも頂点に。

さらにデスドライヴズに対抗し得る唯一の存在であるブレイバーンを基幹とする多国籍部隊ATFが発足し、パイロットであるイサミに重い責務がのしかかることになります。自分が皆を守らなければと追い詰められるイサミ。しかし自分1人で戦っているのではないのだとスミスに教えられたイサミは、世界を救う強い覚悟を持ち、徐々にブレイバーンと打ち解けていきます。ストレスの素だったブレイバーンとの関係は、唯一無二の力強い相棒へと変化していくんです。

 

戦い守るスミスの善性

アメリカ海兵隊所属のスミス。私は軍についての知識が乏しいため、海軍のことだと思ってましたが違うんですね。海兵隊は本土の防衛の任を負わない外征専門部隊。米軍参戦となれば、スミスは真っ先に戦闘に切り込んでいくことになります。日本の自衛隊員であるイサミとは違い、常に戦闘を近くに感じている精鋭部隊の一員なわけです。

幼い時に両親を亡くし、ヒーローに憧れ、激しい競争を生き抜き、厳しい訓練に耐えて海兵隊のTSパイロットとなったスミスは、言うまでもなくエリート。そんな彼は、日本との合同演習で旧式TSでありながら非常に良い動きを見せるイサミを知り、そのTSパイロットとしての実力を素直に認めます。

きっとスミスはTSパイロットとなるまでに、努力に努力を積み重ねてきたのだろうと思うんです。だからこそ、自分より性能の劣る旧式のTSで眼を見張る活躍を見せたイサミのこれまでの努力を含めて、彼を評価したんですよね。

良きライバル・良き仲間になりそうな2人でしたが、宇宙から来た敵による襲撃で物語はガラリと変わります。巨大な敵の攻撃によりたくさんの仲間が傷ついていく中、スミスはブレイバーンに乗り込むイサミを目撃するんです。

敵の攻撃からイサミを守ったブレイバーンの姿見たスミスは、まさに地球を救うヒーローが現れたと感じたに違いありません。自分の憧れていたヒーローが、絶体絶命に危機に直面している自分たちを救いに現れた。しかしブレイバーンに選ばれ、ブレイバーンに乗り込み敵を撃退したのは、自分ではなくイサミだったんです。

 

 イサミィーーッ! そろそろだよな!? イサミィーーッ!!

 

襲撃してきたデスドライヴズと戦うためにイサミを必要とし、うるさいくらいに名を呼び続けるブレイバーン。搭乗を嫌がるイサミを見兼ね、スミスは代わりに自分が乗ろうと持ちかけますが、ブレイバーンに「生理的に無理」という理由で拒否されてしまいます。

ヒーローに憧れ、厳しい訓練に耐え、常に戦いの最前線に身を置いてきたというのに、そしてイサミと2人並んでのビジュアルがあったにもかかわらず、 スミスはブレイバーンの嗜好(?)を理由にヒーローとして選ばれなかったんです。スミスもかわいそう。

なぜ俺ではなくイサミが選ばれるんだ⁉︎  って感じでスミスとイサミの仲が悪くなったりするのかとも思いましたが、これもまた違うんですよ。

ブレイバーンに拒絶されたスミスは、海で救助した正体不明の少女ルルの監視を命じられます。なぜ自分がなど言わず、スミスはまるで父親のようにルルの世話を焼いてやります。

また、自分が皆を守らなければと大きなプレッシャーを抱えこんでしまったイサミの様子を気にかけ、彼を勇気づけようと手を尽くします。

そしてブレイバーン支援のTS部隊の隊長に任命されると、晴れやかな表情で引き受け、隊名をブレイブナイツと名付けます。

自分の出来得る全てをもって誰かを助け支えようと動く、それはスミスの善性であり、きっとそれが彼の思い描くヒーロー像なんだろうと思います。

 

敵を魅了するスミスの想い

デスドライヴズに対抗し得るのはブレイバーンのみであり、ブレイバーンに搭乗できるのはイサミのみ。一方スミスはルルと常に一緒にいるてほのぼのしているため、 イサミとの絡みは多いものの共に戦っている感が薄く、もう1人の主人公というより主人公の親友ポジ的な印象で物語が進んでいきます。なので、スミスがブレイブナイツの隊長として初出撃する8話がスミスのモノローグから始まったことで、新展開となり今までの物足りなさが解消されるかなと思ったんです。確かに新展開でしたが、その衝撃はあまりに大きいものでした。

3体のデスドライヴズが同時に襲撃してきたため、スミスたちブレイブナイツのメンバーは自分たちだけでそのうちの一体クーヌスと対峙することに。このクーヌス、なぜかブレイバーンではなくスミスに「交わろう」と言って絡んでくるんですよ。TSの能力だけでは太刀打ちできず、クーヌスの時空を操る能力でブレイブナイツの隊員たちが何度も繰り返し爆死させられるという最悪の事態に、スミスはある決意をします。

 

イサミ、勇気だ。勇気……爆発だ!

 

クーヌスに突進し至近距離から全ての火器での攻撃を行ったスミス。彼はイサミに「勇気爆発だ」という言葉を遺してクーヌスもろとも爆死してしまいます。ベイルアウトじゃありません。完全なロストです。ペシミズム、ヴァニタスのデスドライヴズ2体と戦っているイサミは、その知らせに冷静を失ってしまいます。

そりゃそうですよ。自衛隊の同僚や上司よりも、もっとずっと奥に踏み込んでイサミの心に寄り添い支えてくれたスミス。そんな彼とイサミは心を通わせ、「共に世界を救おう」と誓い合うまでに絆を深めていたんですから。

イサミに負けず、見ているこちらも呆然となりました。スミスはもう1人の主人公のはずなのに、何でこんなタイミングで死んじゃうの⁈   って、もうね、大ショックでした。

しかしその後に起きた奇跡。肉体を失い魂となりながら、スミスの中のイサミと共に世界を救うという熱い想いは消せません。クーヌスを自ら飲み込むような形で機械の体を得たスミスは、ブレイバーンとして過去の世界のイサミの元に戻っていくんですよ。

 

俺はずっと…イサミを抱いて…共に…共に戦っていたんだ!

 

スミスのこの言葉、号泣ものですよ。幼い頃からヒーローに憧れていたスミスは、人々を世界をそしてヒーローであるイサミをも守り戦う本物のヒーローとなっていたんですから。スミスは確かにもう1人の主人公だったんです!

 スミスはブレイバーンと姿を変えてもずっと、皆の期待や責務といった重圧に押しつぶされそうになるイサミを励まし寄り添い、共に戦っていたんですよね。その事実を知って、たまらなくなって第1話を見返してみました。初めて現れた時にイサミの名を呼び「待たせた」と言ったことも、イサミに言われて初めて武器を出したり自分のパワーに驚いたような表情になったことも、スミスがブレイバーンとなってすぐにイサミの元に駆けつけたからに他ならないんだと理解できるんですよ。戦う時にコックピットにも流れる主題歌はスミスが鼻歌で歌っていたし、ブレイバーンがいろいろ3Dプリンターで作り出してるのもスミスがプラモデル好きだったからだし、(クーヌスの影響もあってかグイグイ行き過ぎてイサミが恐怖すら感じてましたが)一貫してイサミに対してすごく優しかったし。確かにスミスだ…となりました。

ブレイバーンとして過去の世界にやってきたスミス。でも自分の正体は打ち明けられないし、自分がもし敗れたらイサミも世界も守れないし、スミス自身が望んだこととはいえ、ブレイバーンとなった彼はとても孤独と恐怖を抱えていたんじゃないでしょうか。本人も言ってますが、スミスはめちゃくちゃ頑張ってたよって思います。

 

ただいま、そしておかえり

スミスがブレイバーンであるということをイサミが知るのは、最後の敵イーラの圧倒的な力を前に、ブレイバーンを破壊されイサミが白旗を上げて降伏しようとするという絶望的な状況の中。スミスもブレイバーンも喪い、自分は世界を救えない、自分はヒーローなんかにはなれない、それなのに死ぬのは怖い。ブレイバーンのコックピットに逃げ込み、打ちひしがれるイサミにスミスの魂が現れます。ブレイバーンがスミスだったことを理解したイサミ。「共に世界を救おう」という言葉が本心からのものであることを、スミスはその身をもって証明し続けてくれていたんです。その事実がどれほどイサミを勇気づけたか!

ヒーローとしての覚悟を胸に真に覚醒し、ブレイバーンと勇気融合合身しバーンブレイブビックバーンとなったイサミはイーラを撃破。しかもこの時イサミは、「ブレイバーンと愛と勇気で繋がっていた」と言ってるんですよ。スミス、良かったな!

そして8体のデスドライヴズを倒した後に、ラスボスでありデスドライヴズでありながら「死を望まない」真の生命体ヴェルム・ヴィータが現れますが、駆けつけた仲間たちの想いをイサミは一刀両断で下します。ブレイバーンと文字通り一心同体となったイサミにとってラスボスとはいえ脅威ではありませんでした。まさしく無敵のヒーローになったんですよね。

敵を倒すため全てのエネルギーを使い果たし、粒子となって消えていくブレイバーン。スミスの名を呼びながら涙を流すイサミの頬を流れる涙。

 

ただいま

 

イサミに微笑みかけるスミス。目を見開くイサミ。

スミスがヒーローとして勇と共に戦いたいという強い想いで機械の体を得て蘇ったように、ヒーローとして世界を救う戦いを終えたイサミのスミス本人を強く望む想いが、再び奇跡を起こしたんですよね。イサミの想いによって、世界を救った後、人々に歓喜で迎えられ帰還する生身のヒーローになれたんです。このシーン、スミスがホントかっこいいんですよ。

この『ブレイバーン』の物語は、イサミが胸の奥の勇気を爆発させヒーローとなり世界を救う物語であると同時に、スミスがヒーローになるという願いを叶え世界だけでなく自分自身をも救う物語でもあるのだなと感じました。

 

『勇気爆発バーンブレイバーン』の公式サイトはこちらです。

bangbravern.com