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映画『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』についてガッツリ語りたい

皆さんは映画『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』をご覧になりましたか? 本編である『ブルーロック』に突然ドボンした身の私、その勢いのままに早速観に行ってきました! 良かった! エピ凪最高! といまだ興奮冷めやらず、です。

ということで、今回は映画『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』(以下『エピソード凪』)について語っていきたいと思います。

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bluelock-pr.com

 

 

もう1人の主役 凪誠志郎

私が『ブルーロック』にハマったのはおよそ1ヶ月前。新参者もいいところですが、あまりにも面白くて語らずにいられず、勢いでこのブログに記事をアップしてました。

isanamaru.hatenablog.com

 

私が『ブルーロック』の何に射抜かれてしまったかというと、主人公である潔の泣き顔なんですよね。理屈抜きに、とにかく可愛いって思っちゃったんです。

そんな潔は強化選手として招かれたブルーロックで、チームZのメンバーと共に、生き残りを賭けた試合をしていくことに。そしてもう後がない状態となった潔の前に立ちはだかる最強の敵、チームVのストライカーとして登場したのが凪です。

保身に必死なチームZの久遠に八百長を持ちかけられた凪は、

 

頑張んなきゃ勝てないなんて弱い奴ってめんどくさいね

 

と言い放ち、それを聞いた潔に「サッカーなめんな!」と敵意むき出しにされちゃうわけです。それまで高い得点能力を持っている以外に凪の情報が無いため、一生懸命な人間を見下すような「ザ・天才」的なイヤな感じの奴が現れたかな? と思わせるような場面ではあったかなと思います。

確かに凪は潔にとって強敵でした。でも実際の凪は、嫌味なところは全然無いし、グイグイ前に出ていくタイプでもないし、豊かな才能を持つがゆえに無自覚なままここまで来れてしまった赤ちゃんみたいな無垢ささえ感じさせるキャラクター。チームZとの対戦後、凪は潔とチームを組んで負ける悔しさと勝つ喜びを共に味わうことになりますが、サッカーを離れた時の潔との会話の様子がぽわぽわしていて、なんとも可愛いんですよね。殺気だっているブルーロックのメンツのなかで、凪は異色に感じられます。

おっとりとしたままでいて欲しいけど、でもきっと変わっていかなきゃ生き残れないし、いやでも変わっていってしまうんだろうなと、凪はひときわこれから先が非常に気になる存在になっていました。

そんな凪を主人公に据えたスピンオフ作品が『エピソード凪』です。『ブルーロック』にハマりたてで本編を追うので精一杯だし、まずは本編をちゃんと読まなきゃと後回しにしちゃってたんですよね。

でもお気に入りの凪が本編の主人公である潔よりも先に劇場版の主役になってるんですから、観に行かずにはいられません。映画館の大きなスクリーンで繰り広げられるエゴイストたちのぶつかり合いは迫力満点でしたし、まさしく天才が覚醒するその瞬間を目撃した衝撃にゾクゾクしました。そして視点が変わることで、ひとつの物語がこんなにも違う表情を見せるのかと驚いたんです。

 

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眠れる天才  凪

潔で『ブルーロック』にハマり、凪が可愛くて仕方なくなり、本編ではキャラクターも増えてきていますが、できれば凪と潔の2人には今後もたくさん絡んで欲しいなと思っている人間の私ですが、『エピソード凪』を観て凪と玲王の関係に胸がキュッとなりました。

 

『エピソード凪』は凪目線で描かれた物語なので、本編では深く描かれなかった「凪が玲王と出会いサッカーを始め、ブルーロックに召集されて戦い、1次セレクション最後の対戦でチームZの潔と出会うまで」が描かれています。凪の感情の揺れ動きが感じられ、凪はこんなにも周りを見ていて、こんなにもいろんなことを考えていたのかと、とても新鮮でした。

本編では、チームZとの対戦時の凪は感情があまり顔に出ないし言葉数もそこまで多くないため、掴みどころがない感じがします。試合前から「めんどくさい」と言ってやる気が感じられないというのに、必死になってゴールに向かう潔たちを、その優れた身体能力とずば抜けたセンスであっさりと上回っていく凪。さらには潔に「何がそこまでキミを突き動かすの?」と聞いたりして、得体の知れなさも漂わせていました。でもそれはあくまでも潔目線での話。凪目線ではこの会話のニュアンスもまったく違うものになるんですよね。

 

胸の底の欲望

夢中になれる何かを見つけられないまま過ごし、「めんどくさい」が口癖になってしまっていた凪。そんな彼は玲王に熱心に口説き落とされサッカーを始めます。持ち前の身体能力の高さと玲王の指示の的確さで、凪はそこまで頑張らなくても試合に勝ててしまい、サッカーを初めてたった半年で注目の選手に。玲王といるのは世話を焼いてくれて大事にされてるのが分かって嫌じゃないし、自分がシュートを決めてサッカーの試合で勝てば玲王が喜んでくれるし、ということで凪はサッカーを続けてきたんだと思うんです。才能の塊のような凪という宝物を見つけて生き生きしている玲王とは、かなり温度差がありますよね。

そんな感じなので、凪は世界一のストライカー育成プログラムであるブルーロックに召集されたものの、絵心の過激な言葉に興味を示さず、最後は玲王に説得されて渋々参加することに。一番最初に絵心の言葉に反応して駆け出した潔とは対照的です。

でも、最後までめんどうくさがり、つまらなそうだと帰ろうとさえしたにも関わらず、凪は絵心に向かって

 

ワールドカップの決勝ゴールなんて
俺には簡単に思い描けたし

 

と言い放つんですよ。

 

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これ、かなりの強気発言ですよね。「ブルーロックなんて無くても自分は世界トップクラスのストライカーになれる」と言っているのと同じことなんですから。

ワールドカップの決勝でゴールを決める自分を想像したこと自体、絵心の言葉に心を動かされていた証拠。なのに凪は全然気づいていない様子です。

凪って自分の感情の揺れに対して、疎い人なんですよね。玲王に誘われて始めたサッカーは、嫌いじゃないけれど何かが足りない。それが何かは分からない。本当は凪の中ではサッカーに対する欲が芽生えているんです。自分に火をつけてくれる存在を求めているんですよ。だけど、そのことを凪自身、気づけずにいたんです。ブルーロックに来るまでは。

 

出会いと目覚め

ブルーロックに玲王と共に参加することになった凪は、チームZの潔たちと同様に、生き残りをかけて5チームによる総当たり戦を戦うことになります。

絵心によって選抜されたストライカーが集まるブルーロックの中でも凪の能力はずば抜けており、ディレクション能力に優れた玲王の指示通りに動いて着々と得点を重ねていきます。天才的な才能の持ち主であるがゆえに、サッカーを深く追求せずとも、人並み以上の成果を出せてしまう凪。努力の末にブルーロックにたどり着いた選手にとっては凪の存在は絶望でしかありませんが、凪自身にとってどのチームも簡単に倒せてしまう相手。ブルーロックに参加したけれど、やっぱりここも物足りなくてつまらない。それって凪にとってすごく酷なことだなと思います。しかし、そんな凪の前に現れたのが潔だったんです。

チームZは、凪のいるチームVとの対戦結果次第で生き残れるかが決まる崖っぷちの状態。負けたら最後の潔たちは、とにかく死に物狂いで凪たちに食らいついていきます。他のチームは凪たちが点を入れれば勝ちを諦めていったのに、潔は諦めずに攻め続けます。潔にとっては、一度手からこぼれ落ちた夢を再び掴み取るチャンスですから、必死になるのは当然のこと。でも凪には、それが不思議に感じたんですよね。凪は潔がブルーロックで一番最初に駆け出したことを知っています。そのことが、ここで効いてくるんですよ。

そこまで面白いとは思えないサッカーに、こんなにもがむしゃらになる潔には、自分とは違う何かが見えているんじゃないか。潔と同じものが見えたら、自分もサッカーに夢中になれるのかもしれない。

潔のプレイに感化されて心が昂り、初めて全ての意識をサッカーに向けた凪。その瞬間、眠れる天才が目覚めたんです。ぼんやりとしていた輪郭が、くっきりと際立っていくように、凪の覚醒はとても鮮烈。今まで冷めたままだった凪の気持ちが熱を帯び、ようやく心と体の歯車が噛み合った感じがしました。

潔のいるチームZとの対戦で、初めて自らの意志でサッカーと向き合い、本気で挑むことの楽しさや負けた時の悔しさを知った凪。サッカーはこの先の自分を賭ける価値があるものだと、凪はこの時、確信できたんではないでしょうか。 ずっと退屈な世界にいた凪が潔に見たと言った光は、未来への希望の光だったんです。

 

手のなかの宝物

容姿にも学力にも運動神経にも、そして家柄にも恵まれ、全てにおいてハイスペックな玲王。望むものは全て与えられたけれど、どれも欲しいものではなかった彼が、初めて熱望したものはワールドカップの優勝トロフィー。いきなりスケールが大きいのが玲王らしさなんだろうなと思います。

サッカー選手になるという夢を両親に認めさせるため、まずは自校の弱小サッカー部を優勝させると目標を定めた玲王が出会ったのが凪でした。優れた身体能力とセンスを感じさせるのに、全くその自覚が無い凪。まさしく磨けば光る原石です。その才能に惚れ込んだ玲王は、すぐさま凪をサッカーに誘います。

何事も面倒くさがる凪は、玲王の誘いに根負けしてサッカーを始めただけなので、全然やる気は無いしすぐサボろうとします。そんな凪を甲斐甲斐しく世話してあげる玲王。まるで小さな子供の世話をする母親のようでさえあります。

凪は天才と言われますが、玲王自身もトップレベルの選手になっているのですから、相当すごいんですよ。でも玲王は、自分のことではなく凪に夢中になっているように見えますよね。

はじめのうちは、凪をサッカー選手として育てることが自分の夢の実現に直結しているから、玲王はせっせと面倒を見てあげていたんでしょう。主従で言うなら玲王が主。しかし、与えた分だけ凪が「勝利」という成果を返してくれること自体に、玲王は喜びを感じるようになっていきます。やっぱり凪はすごい奴なんだと、凪を育てることが楽しくなっちゃっている感じ。主従がいつの間にか逆転してるんですよ。玲王が惜しみなく与えられる子だから、なおさらです。

凪はサッカーを始めてたった半年でトップレベルの選手となり、玲王と共にブルーロックに召集されることに。きっとこの頃には、玲王の方が凪によって能力を引き上げられている状態になっていたのだろうと思うんです。

 

変わっていく2人

ブルーロックに参加することになった玲王は、凪と共にチームVのメンバーとして戦っていくこととなります。凪だけでなく玲王自身も得点を重ね、チームVは総当たり戦でトップに。チームVが勝ちを重ねていることに、玲王は手応えを感じていたと思います。凪と2人でいるのだから当然だとさえ思っていたでしょう。ブルーロックの戦いを凪と2人で最後まで勝ち抜き生き残れば日本代表に手が届く。自分の思い描いた夢が着実に実現に近づいている実感があったはず。 自分がパスを出せば、凪は必ずシュートを決める。2人で戦っていけば、誰にも負けない。 玲王が凪に寄せる信頼は絶対的です。

でも玲王には忘れていることがあったんですよ。それは「人の心は変わる」ということ。

全国からブルーロックに集められたストライカーたちの中でも、凪の能力はずば抜けていました。凪の才能を最初に見出し、サッカーのルールもよくわかっていないところからトップレベルの選手たちを蹴落とすまでに育て上げた玲王は、「宝物だ」と公言するくらい凪を誇らしく思っていたし、凪は自分だけのものだと優越感も抱いていたんですよね。

しかし、凪はブルーロックで潔と対戦し、気づいてしまったんですよ。本気でやるサッカーは面白いということに。そして自分の意志で動き始めてしまうんです。

今まではずっと、玲王から出されたパスをシュートしていた凪。玲王はそれで良いと思っていたし、それ以外は望んでいませんでした。凪の凄さを引き出せるのは自分しかいないと思っていたけれど、凪はその枠では収まりきれなくなったんですよね。だって凪は、玲王が惚れ込むほどの才能を持つストライカーなんですから。

チームZとの対戦で刺激を受け、玲王ではなく潔と組むことを選んだ凪。突然の変化に全くついていけず、呆然とする玲王。まるで「今まで愛情込めて育ててきた我が子が突然自我に目覚め、自分の思いもしない方向へと進んでいくその成長に追いつけずにいる親」のように見えてきてしまって妙に玲王に共感してしまい、胸の奥がギューッと痛くなっちゃったんですよね。

玲王はずっと、凪が可愛くて仕方なかったんだと思うんです。玲王にとって凪は、本当に大事な宝物だったんです。親友であり、共に夢を叶える唯一の相棒。そんな凪は、自分の意志で玲王から離れることを決めました。 その手を取って凪を立ち上がらせたのは、紛れもなく玲王でした。でも凪が自分で手を伸ばした相手は潔だったんです。

玲王がもしもサッカーの指導者だったら、サッカーでもっと頑張りたいと言うようになった凪の変化を喜ぶこともできたし、笑顔で送り出すこともできたでしょう。でも玲王は凪と同じサッカー選手です。凪との関係性が崩れただけでなく、サッカー選手としての能力を見限られたかのような形で凪と離れたわけですから、打ちひしがれてしまうのは当然ですよ。自分の価値がもう無くなってしまったくらいの絶望だったのではないでしょうか。

 

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本編だけ見ていた時は、玲王ってなんだか生意気に感じられて、正直ちょっと苦手だったんですよね。凪を従えてる印象だったんです。でも『エピソード凪』を観て、その玲王の強気な態度は、凪との強い絆からくるものだったんだと感じられました。凪の方でも玲王との関係は絶対だと思っているから、言葉が足りないまま1人で飛び出せたんですよ。 でも初めて経験する「喪失」にショックを受ける玲王には、それを察する余裕なんてありません。

 凪と2人で一緒に戦っていくことはマストだと思っていた玲王。気持ちが繋がっているから玲王と離れても大丈夫だと思う凪。信頼しあっているからこそ生じた齟齬なんですよね。

映画のラスト、凪を見送る玲王の表情に、彼の優しさと強さを感じました。

 

Stormy 

『エピソード凪』の主題歌である「Stormy」。Nissy×SKY-HIのこの楽曲は、 凪と玲王の関係を象徴するようにボーカルとラップが対立し合い協調し合い進んでいくメロディが印象的。 この曲が 『エピソード凪』のイメージを決定づけたなと思います。ウェットにならず、世界一のストライカーになるためのシビアな戦いの中に身を置いている2人の物語だということが伝わる曲になっています。

サビが、とにかくかっこいいですよね。予告映像で初めてサビを耳にした瞬間の衝撃は本当に大きくて、まさに目が覚めるような感覚でした。

 

youtu.be