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BL『金髪坊っちゃまと日本人執事』について語りたい

皆さん、可愛い男の子は好きですか〜? ということで、ん村先生の商業BL『金髪お坊っちゃまと日本人執事』という作品をご存知ですか? 9歳の坊っちゃまがうっかり恋に落ちてしまった相手は、自分の家で使用人として働く24歳の日本人のタナカ。好きな気持ちとは裏腹に素直になれない坊っちゃまの一途な片想いがとにかく可愛いんです。今回はこの『金髪お坊っちゃまと日本人執事』について語っていきたいと思います。

ネタバレが含まれるので、ネタバレダメという方は注意してお読みください。

 

坊っちゃまの初恋

BL作品とひとくちに言っても、いろんな設定がありますよね。幼馴染みだったり、大学生だったり、会社の上司と部下だったり。また現実世界だけでなくファンタジーの世界を舞台にした作品もあったりして多様です。

この『金髪お坊っちゃまと日本人執事』の主人公の坊っちゃまは、お金持ちの一人息子と軽くひと言で紹介されてはいますが、何人もの使用人を抱える大きなお屋敷に住み、アフタヌーンティをたしなみ、使用人に公子さまと呼ばれたりもすることから、ただ単にお金持ちであるだけではなく、なかなかに貴い家柄のご子息なのだろうと思われます。

そんな坊っちゃまは、使用人の中でただ1人の日本人であるタナカが気になって仕方ない様子。ニンジャの国からやってきた、ほとんど表情を変えずにテキパキと完璧に仕事をこなすタナカ。坊っちゃまは家庭教師のレオに勧められてタナカに薔薇の花をプレゼントすることにしますがタイミングが合わずにすれ違ってしまい、なかなか渡すことができません。我慢しきれなくなり坊っちゃまは薔薇の花を手に、入ってはいけない使用人部屋に突撃します。勤務を終えて自室でくつろいでいるタナカの素の姿を初めて目にし、困惑する坊っちゃま。手渡した薔薇の花にタナカがにっこりと微笑んだ瞬間、坊っちゃまは恋に落ちてしまうんです。

仕事中はいつも撫でつけている前髪を下ろして元から童顔なのがさらに幼く見えるし、いつも笑わないと思っていたのににっこりと笑顔を見せてくれるし。お仕事モードと普段のタナカとのギャップ、良いですよね〜。分かる、分かりますよ、坊っちゃま。

でもまだ9歳の子供の坊っちゃま。そしてタナカは24歳の大人です。ご主人と使用人という身分の差に加えて、2人の歳の差は15歳。坊っちゃまに気に入られているらしいとは感じているものの、まさか自分が坊っちゃまに恋心を抱かれているなどとは思ってもいないタナカ。しかしそんな小さなことなど、坊っちゃまは全く意に介しません。恋に落ちてしまった坊っちゃまはタナカを自分専属のお世話係に指名。坊っちゃまの可愛い猛攻が始まります。

タナカがお休みの日だと知らずにスネてしまったり、家庭教師のリオを恋敵だと勘違いをして「絶対負けない」と宣戦布告したり。少し天邪鬼な坊っちゃまは、タナカのことが好きだと態度に素直に表すことができません。読み手の私たちは坊っちゃまの恋心を知っているのでタナカに構ってほしくて仕方ない坊っちゃまの言動が理解できるのですが、事情が分かっていない使用人たちの目にはただのわがままに見えてしまいます。家庭教師のリオもなぜ自分が坊っちゃまに威嚇されてしまうのかと戸惑うばかり。以前はもう少し聞き分けが良かったと困り顔です。そして肝心のタナカも坊っちゃまの好意に気づかず、良かれと思ってリオと坊っちゃまの仲違いを解決しようとして余計に拗れさせるなど、なかなかうまくいきません。

タナカへの思いが強いほどに坊っちゃまの行動は空回り、使用人たちはそれに振り回されてしまいます。坊っちゃまがまだまだ幼い子どもだからこそ成り立つシチュエーションなんです。

 

早く大人になりたくて

坊っちゃまは9歳。当然自分はまだ子どもだという自覚を持っています。1日でも早く大人のなってタナカにプロポーズしたい。タナカにかっこいいと思われる大人になりたい。坊ちゃまは焦るばかりです。

早く大人になりたいと願う坊っちゃまに、家庭教師のリオが語る言葉が良いんですよ。ただ体が大きくなるだけでも歳を取るだけでも、かっこいい「大人」にはなれないのだと諭して聞かせる彼の言葉には、坊っちゃまへの愛情が感じられます。

リオだけではありません。坊っちゃまの恋心に気づいているパティシエのアランも坊っちゃまが傷ついてしまわないようにと嘘をつきますし、恋の相手であるタナカも、坊っちゃまから贈られた花を丁寧に生けてキレイに並べて飾っており、坊っちゃまの将来が楽しみだと笑いかけます。

坊っちゃまの両親は忙しいらしく作品に登場しませんし、同年代のいとこのエマ様以外に坊っちゃまには一緒に遊ぶような友達もあまりいない様子。でも周りにいる大人たちがこのように優しい目で坊っちゃまを見守っているからこそ、坊っちゃまははっきりと寂しくないと口にするのだろうと思うんです。

坊っちゃま、どうか健やかに育っておくれ。切にそう願うばかりですよ。

自分が大人になり独り立ちする日を想像する坊っちゃま。すっかり背も伸びた彼の隣には、使用人の制服ではなく私服を着たタナカの姿。つまり坊っちゃまは、タナカを自分のパートナーとして共に屋敷から出る日を思い描いているんですよね。あくまでも坊っちゃまの頭の中での想像なので、タナカは今のままの姿ではっきりと思い浮かべられていますが、大人になった坊っちゃま自身の姿はまだ漠然としているためか後ろ姿でどんな表情をしているのかまったく分かりません。

でも坊っちゃまは、これからたくさん勉強をして、いろんな経験も積んで、素敵な男性になっていくことでしょう。立派に成長した坊っちゃまの隣でタナカが微笑んでいる未来は、きっと、いえ絶対にあると思います。