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マンガ、アニメ、ゲームなど好きだと思ったものについて無節操に書き綴ります

「見守り女子」がいるBL作品について語りたい

BL作品とは男性同士の恋を描いた作品。とは言っても、もちろん女性キャラも存在しています。顔もはっきり描かれずぼんやりした感じのモブ女子もいれば、主人公の友人などの身近な存在としていたり、彼らのどちらかに横恋慕するなどして波乱を起こすような女子もいます。

なかなか印象的で好きな女性キャラもいるのですが、その中で今回は主人公CPを見守っている女子が出てくる作品について語りたいと思います。

 

 

『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』 藤崎さん

まず語っていきたいのは豊田悠先生『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』です。ドラマにもなり実写映画化もされ、さらにはタイ版のドラマも制作され、2024年にはアニメ放送が予定されている作品です。

30歳まで恋愛経験のなかったサラリーマンの安達清(あだちきよし)は、触れた人の心が読めるという魔法を手に入れてしまいます。コンビニの店員さんに手が触れてキモいと思われているのを知ってしまったり、通勤電車ではいろんな人の声が聞こえてきてぐったりしてしまったり、魔法のせいで散々な感じ。ちょっとかわいそうです。

そんな安達は、会社のエレベーターを待っていると、同僚の黒沢優一(くろさわゆういち)と一緒に。朝の出勤時、混み合い押された安達を庇った黒澤から聞こえてきた声がこちら。

 

うわー
すげー近い
すげー可愛い
すげー好き
今日めっちゃツイてるやばいめっっちゃドキドキする

 

顔も性格も良くて仕事もできて女性にモテて自分とは真逆な存在の黒沢が、実は自分のことを好きだと知ってしまった安達。しかもその黒沢の心の声の内容は、中学生男子かってくらいの可愛さ。好きだと安達に悟られないよう表面上はクールに振る舞っている黒沢ですが、心の中の妄想はわりと暴走気味。そんな黒沢にドン引きしたりもしつつ、自分のことを一途に思ってくれていることを知った安達は、徐々に黒沢の思いを受け入れていきます。

そんな2人を見守るのが、同僚の藤崎さん。彼女は清楚系の可愛らしい女性。安達はもしもこんな女性に好かれたらと思いながらも、前に踏み出すことはできずにおり、黒沢は安達と藤崎さんがお似合いだと嫉妬してしまったりしています。が、藤崎さんは黒沢と安達を温かく見守ってくれているんです。

藤崎さんの心の声を聞いてしまった安達は彼女に思いを寄せられていると勘違いしてしまいますが、彼女にとって色白で素朴な感じの安達は非常に好みな「受け」。藤崎さんは自分が安達に近づくと黒沢ががっつり見てきたり黒沢と安達が一緒に出社してきたりしていたりしていることから妄想を膨らませて楽しんでいるわけです。もちろん彼らの関係の変化もいち早く察知し、心の中で涙を流して喜んでくれますし、同じく黒沢と安達が推しカプである同僚たちと「くろあだ」か「あだくろ」かで盛り上がるなども。しかし、萌える気持ちを本人たちには気づかれないよう、しっかり仮面をかぶって接しているのはさすが。

可愛らしいのに2人に深くは関わらず、彼らの関係の深まりゆく様子を歓喜と祝福をもって見守る姿勢。完璧です。

 

 

『さんかくトワイライト』 園田さん

次に語るのは、はかた先生『さんかくトワイライト』。なぜか金髪ヤンキーの長谷川未来(はせがわみき)と図書委員でペアを組まされてしまった原一慶(はらいっけい)。サボって図書室に姿を現さない未来でしたが、1学年先輩の青葉の言いつけを素直に聞いて、当番の日に来るように。自分といる時と青葉といる時との表情の違いから、未来が青葉を好きだと気づいた一慶。そんな青葉への恋心を知ってもからかったり馬鹿にしたりしようとはしない一慶に心を許した未来は、まるで子犬のように懐いて委員会の仕事以外の時間も2人は一緒に過ごすようになっていきます。

本来の未来はとても人懐こく素直な性格だということが分かってくるにつれて、絆されていく一慶。青葉が未来の気持ちを知りながらもいろんな女の子と遊び回り、それでいて未来に対して思わせぶりな態度を取り続けていることに苛立つようになっていきます。一方で未来も、青葉を好きな気持ちと一慶に対しての気持ちが少しずつ逆転しているのを感じるようになっていきます。

そんな一慶と未来を見守る女子は、図書委員長の園村さん。髪を低い位置で2つに結び、眼鏡をかけ、セーラー服のスカートも膝丈、真面目で優等生な感じの女の子です。委員会の仕事を未来がサボった時の穴埋めは、いつも彼女が嫌な顔一つせずに引き受けています。

女の子たちからモテているものの人付き合いが苦手な一慶にとって、グイグイ来ることのない園村さんは気楽に話せる唯一の女子。しかも彼女は、とても良いタイミングで一慶の背中を押すような言葉をかけてくれるんですよ。

未来がツルんでいるいる青葉が「あまり良くない友達」だという情報を一慶に提供し、未来と仲良くなってから一慶の表情が豊かになったことを教えてあげ、未来を好きだという一慶の気持ちを受け止めた上で、ろくに話もできないままで未来が青葉と付き合うことになってしまって後悔しないのかと問いかける園村さん。彼女は女子からの人気がすごい一慶にも金髪にピアスの未来にも同じ態度で接しますし、彼らの恋に出しゃばることなく、2人の関係が深まった時には優しく祝福してあげるんです。その邪魔をしない程よい距離感、自分もそのポジションから恋の行方を見守りたいと思わせられます。

園村さんがこの先も一慶と未来の2人の話をニコニコと聞いてあげている様子が目に浮かびました。

青葉先輩を主人公にしたスピンオフも始まるとのこと。彼はなかなかにズルい男でしたが、終盤で未来に向けた優しい表情と言葉は、彼が本当はそんなに悪い人ではないんだなと感じさせました。スピンオフもとても楽しみです。

 

 

『恋ではないと思いたい』 桜庭さん

次に語りたい作品は、澄谷ゼニコ先生『恋ではないと思いたい』です。遠野恵一(とおのけいいち)と和泉宗太(いずみそうた)は幼馴染み。無表情であまり喋らない宗太は、逆にそこが大人っぽくてミステリアスだと女の子によくモテますが、恵一がいるからいいと言って彼女を作ろうとはしません。

そんな宗太に恵一は好意を抱いていますが、彼が何の感情も抱いていない相手に告白されて断るたびに罪悪感に苛まれていることを知っているため、想いを押さえ込んだまま。

あくまでも幼馴染みでいようとする恵一。しかし、今まで誰からの告白も断っていた宗太が女の子と2人で買い物に行くことを知った恵一は居ても立ってもいられなくなり、2人の出かけたショッピングセンターへと向かいますが……という物語。

この作品にでてくる「見守り女子」は、桜庭さん。宗太はよく保健室に行っており、恵一がいつも宗太を保健室に迎えに行くのがお決まり。病弱な桜庭さんは保健室で休んでいることが多いため自然と宗太と会話をするようになっていたようで、桜庭さんと笑顔で会話をしている宗太を見た恵一はショックを受けたりしています。

この桜庭さん、「見守り女子」としてはちょっと異色。恵一が宗太への恋心から目を背けていることにイライラしており、宗太が女の子と付き合うのかもと落ち込む恵一を鬱陶しいと一蹴、いつまでも踏ん切りがつけられないでいる恵一にお説教をしたりするなど、めちゃくちゃ毒舌でかなり短気。恵一はずっと彼女に押されっぱなしです。

しかし、一方的に好意を押し付けて宗太に罪悪感を抱かせる他の女子たちのように、この気持ちを伝えて宗太を傷つけたくはないと、一歩を踏み出すことができずにいる恵一の背中を押すには、桜庭さんくらい強く言ってあげないとダメだったんじゃないでしょうか。

そんな桜庭さんが入院してしまったことがきっかけで、いつまでも変わらないままではいられない事実に恵一は目を向け、宗太に想いを告げることになります。結果として桜庭さんは恵一と宗太のキューピット役となったわけですが、彼女が特に2人の恋を応援していたわけではないというのがなかなか面白いところ。

この作品は恵一目線のため、宗太の気持ちははっきりとは分からないまま物語が進んでいきます。でも最後に桜庭さんから明かされる宗太が保健室に来る理由を知ると、宗太もずっと恵一が好きだったということが伝わってきて、彼がとても可愛らしく感じられると思います。