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『ファイアーエムブレム 風花雪月』について語りたい【20】現実と架空と

「Nintendo Direct 2022.2.10」で、『ファイアーエムブレム風花雪月無双』の発売が発表されました! もう少し待てば「同じフォドラであり得たかもしれない、新たな物語」が味わえることになりますね! 楽しみ〜!

ということで、パラレルな世界のもう1つの物語が楽しめるのは、これがゲームという創作物のお話だから。現実はそうはいきません。転換点というものは後から見ればあるのかもしれませんが、時間は一本道に進むだけで分かれたまま並走したり途中で入れ替えたりもできません。

何を言っているかというと、今起きてしまっているロシアによるウクライナの侵攻についてのことです。ゲームと現実を何も同列にして考えることもないだろとは思っているんですけれど、このブログの【18】二巡目の「紅花の章」でつらつらと書いていたことが現実世界の出来事と何か重なってしまっているような気がしてしまって、私自身がつらくなってきてしまいました。ということで、『ファイアーエムブレム 風花雪月』の世界と絡めつつ、現実世界で起きている戦争についてちょっとここで吐き出したいなと思います。

 

オープニング画面

 

皇帝という者

『ファイアーエムブレム 風花雪月』ではアドラステア帝国の皇帝に即位したエーデルガルトがセイロス教団に宣戦布告し、教団に味方するものは帝国の敵とみなすと言い放ち戦争を始めます。これって、セイロス教団はともかくとしてファーガス神聖王国やレスター諸侯同盟にとって寝耳に水のとばっちりですよ。

確かに袂を分つ形で3つに分かれた国々ではありますが、三すくみが功を奏してか現在は表面的には均衡を保っていたわけです。そこに至るまでの経緯には色々とあったろうとは思いますよ。フォドラの地には初っ端から聖者セイロスの息が掛かっていてセイロス教団の影響が色濃かったりしますし、それぞれ3国の統治形態も違っていますし。

帝国は皇帝による統治、王国は王による統治、同盟はリーダーはいますが諸侯の合議によっての統治とそれぞれなっていますね。同盟は明らかに統治の仕方が違うなと思いますが、そういえば「皇帝」と「王」って何が違うのってなりませんか? 

おとぎ話とか読むと、国には王様がいてお姫様や王子様がいるという感じですよね。ある民族による1つの国を統治する者が「王」なんですね。その後継者は王様の息子や娘であり、血族によって統治が継承されていきます。つまり世襲が基本なんです。なのでブレーダッド家の血を引く正当な後継者であるからこそ、ディミトリをみんなが献身的に支えているわけですね。

立憲君主制か絶対君主制かの違いはありますが、現代でもその血筋が続いているということで、イギリスなどをはじめ幾つも王家が存在しています。ちなみに諸侯というのは「王」ほどの権力や領地はないけれど統治をしている者となります。レスター諸侯同盟は諸侯がそれぞれほぼ同じくらいの領土・豊かさ・権力であるからこそ合議が成り立っているのでしょう。

対して「皇帝」というのは、実は始皇帝が使い始めた言葉。造語ですね。中国史上初めて統一を果たし、各地をそれぞれ統治していた「王」たちを束ねる者に相応しい呼称として自らを「皇帝」としたそうです。王の中の王という意味合いですね。

同じ「皇帝」でもヨーロッパの方ではちょっと違っています。カール大帝って世界史で習ったと思いますが、フランク王国の「王」である彼はローマ教皇によって「西ローマ帝国皇帝」の冠を与えられた「皇帝」でもあるんです。つまりヨーロッパで言う「皇帝」とは、政治的権力の頂点に立った統治者・支配者として認められた者という意味合いだと思えばいいのかなと思います。古代ローマの皇帝は元老院で選ばれた者で血縁者への継承はしていませんし、「王」とは違ってもともとは血縁ということは関係ありませんでした。だからナポレオンは血筋の正当性がないため、「皇帝」にはなれても逆に「王」にはなれなかったんですね。

こう見てみると、『ファイアーエムブレム 風花雪月』の中で大っぴらには書かれてはいませんが、アドラステア帝国はその絶対的な権力によっていくつもの民族、幾つもの小国を飲み込んだ形で支配している国だということになります。

支配者として皇帝はその力を堅持していなければなりません。エーデルガルトの父親であるイオニアス9世は「七貴族の変」によってお飾り皇帝になってしまったがために宰相たちに色々やりたい放題され、その結果がエーデルガルトやその兄弟たちに施された忌まわしい血の実験につながっていったわけです。帝国として内部はグラグラ。なので父親の跡を継いだエーデルガルトは、とにかく皇帝として自分の権力を高める必要があったんですね。

エーデルガルトは国を統べる立場になったのだし、憎き宰相一派に一矢報いるためにも貴族制度を廃止して紋章などに振り回されない国を自分の力で作り上げればいいじゃんって思うんですけど、そうはならずセイロス教団殲滅のため戦争を起こすという方向に突っ走っていきます。でもそれは彼女の性格や過去の因縁だけでなく、帝国という国の在り方として「強い皇帝が統治する強い国」という姿を見せつけ知らしめなければならなかったこともあると思うんです。

紋章というものがあるからこんなことになったんだという理屈でセイロス教団に宣戦布告し、教団の味方をするからと言って王国や同盟に攻め込んでいくエーデルガルト。ですが、もし彼女に辛い過去がなかったとしても、そして彼女にそのつもりがなかったとしても、弱体化してしまった皇帝という地位についたエーデルガルトは、強固な権力を取りもどすために何かしらの強硬な手段に出ざるを得なかったのではないでしょうか。

 

現実の話を

現代には国王はいても皇帝はいません。なぜなら王国はあっても、複数の国を束ねて支配する帝国は存在していないからです。

なのですが、帝国の在り方に近いなと感じてしまうのが今のロシアです。そしてそのトップにたつプーチン大統領はKGBの対外情報部員から連邦保安庁長官、連邦安全保障会議事務局長を経て大統領にまで上りつめた人物です。そして2000〜2008年、2012〜2022年3月現在まで約20年もの長きにわたって大統領であり続けています。

ロシアってかなり広大な国ですよね。大の民族はロシア人ということですが、この1つの国に、少数民族なども含めて合計で100以上の民族が存在しているそうです。民族というのは、「言語・宗教・伝統といった文化を共有していて、自分達は同じ仲間であるという強い帰属意識を持つ人々の大きな集団」と言えると思います。彼らが納得しているのであればいいとは思いますけれども、さまざまな背景を持つ民族を本当に1つの国にまとめていられているのか、すごく疑問を感じてしまいます。

ロシアの前身であるソビエト連邦が崩壊した後、今ロシアから攻撃を受けているウクライナをはじめとする14の国々が独立しました。独立する前の国名には「ソビエト社会主義共和国」いう文言が追加されていました。例えばウクライナは「ウクライナ・ソビエト社会主義共和国」とされていたんです。それはそれら14国は国同士対等に繋がっていたわけではなく、ソ連の中に飲み込まれていたことを示しています。ソビエト連邦共和国という名前でしたが、それってほぼほぼ帝国なんじゃないのって感じですよね。自分達はソ連の一部ではないという強い意識があるからこそ、その14国はソ連崩壊後に独立したわけです。

そのソ連崩壊が1991年ということで、約30年前とわりと最近のことなんですよね。プーチン大統領はソ連崩壊当時まだ30代。国が崩壊して体制が変わるって、かなり衝撃的なことだったろうと思います。それまでの体制を良しとしていたならなおさらですよね。

ソ連崩壊後、国はロシアと変わり、独立した14国はロシアとはそれぞれに違う道を歩んでいます。面積の大きい小さいに関係なく一国は一国。どの国がどうなっていくのかを決めるのはその国の人間であって他国が介入するべきことではないはず。しかも武力行使で侵攻していくなんて、どんな理由を挙げたとしても絶対あり得ないなと思います。それでもプーチンはウクライナに攻め込んでいるわけですよね。ウクライナという国は残すかもしれませんが、実質ロシアの支配下に置こうとしているのでしょう。プーチンはソ連時代を今も引きずり、自分が大統領であるうちに昔のソ連であった頃の栄光を取り戻そうとしているように見えます。1人の人物が長期間ずっと一国の権力のトップに居座り続けていると、悪い方向に突っ走ってしまってもそれを阻止する仕組み自体がもはや無く、誰も止められないのだと怖くなってしまいます。

 

ゲームの世界だけで

そこにどんな主義主張があっても武力によって他国を蹂躙するというのは絶対に許されないですよね。高い武力を持つ大国が侵攻して主張を通そうとするというの、なんかこれってどこかで見たなということで、ニュースを見ながらふとアドラステア帝国の挙兵に始まるフォドラ3国の戦争を思い起こしてしまったりします。エーデルガルトの主張には共感するところはありますが、それでも他のルートをクリアした後に帝国ルートをプレイするとざらついた気持ちが残ってしまうのは、彼女が主張を武力によって押し通したというところが大きいと思います。旧王国・旧同盟の人々は望みもしないのに武力によって帝国に飲み込まれ、皇帝であるエーデルガルトの理想を押し付けられることになります。ゲームの世界ではありますが、それってどうなのよってつい思っちゃうんですよね。

ただこれはあくまでもゲームなわけですよ。キャラクターが死なないようにする設定も選べますし、戦略が失敗したなと思えば時間を巻き戻してやり直すこともできます。架空の世界の架空の歴史。

でも、現実世界は違います。戦闘によって失われた命は戻りませんし、傷ついた体も心も戦いの前の状態に完全には戻ることはできません。時間はただ前にのみ進んでいきます。攻め込んでいる側であるロシア国内でも反戦デモが行われ警察に身柄を拘束される人々の姿がニュース映像で流れてきます。戦争ってその国の人間全てが望んで始まるわけではなく、その国を統治する権力を握っている者が始めるものなんだと感じます。

どんな理由があろうと、やっぱり他国を侵略し武力でねじ伏せようとするその行為自体、絶対に許されません。そんな国が現れるのはゲームなど創作物の中だけであってほしいと心から願います。

 

次回は公式から出された歓喜の紅茶セットについて語っています。興味を持っていただけた方は、こちらからどうぞ。

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